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映画『007 NO TIME TO DIE』が3度目の公開延期になって待ち遠しいのでシリーズの演出を振り返る

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2020年、本来であれば記念すべき25作目を迎えた英国の代表作ともいえる映画『007』シリーズの最新作が公開される予定でした。その名も『NO TIME TO DIE』。しかしながら、監督の途中交代や、全世界で未だ猛威を奮うコロナウイルスの影響でなんと再々々延期が決まってしまいました。そのため今回は007の制作過程に秘められた手法を振り返りながらその素晴らしさをお伝えしたいと思います。

▼『007 NO TIME TO DIE』ティザー映像

これまでの延期の経緯

2020年はコロナの影響で世界的にも公開延期のオンパレードになってしまいました。2020年12月時点、ざっと映画館のサイトを覗くだけでも30作品以上が年内の公開を見合わせています。映画に限らず映像作品はいろんな人の努力が積み重なっているものですから、1日も早く感染症を気にせず作品を世に出せる世の中になるといいですよね。ちなみに、『007 NO TIME TO DIE』の延期の経緯は以下の通りです。

 

  • 2019年 当初公開予定
  • 2020年 4月に公開延期 (監督の交代や主人公のケガやら色々ありました)
  • 2020年 11月に公開延期 (コロナウイルスの影響)
  • 2021年 4月に公開延期 (コロナウイルス終息の兆しがないため再延期)

 

世界広しといえどもここまで延期が長引く映画もなかなか珍しいのではないでしょうか。それでもファンは荒れることなく大人しく公開を待っています。基本的な作風がかなり紳士的かつ、色々な困難や挫折を耐え抜いて、ズタボロになりながらも自分なりの成功を掴むシナリオなので、ファンの心にもそういった辛抱強さがあるのだと思います。次項からは具体的な演出についてご紹介します。

歴代継承されてきた設定と豪華キャスト

007を『007』たらしめているものはまさにその磨き抜かれた設定とキャスティングと言えます。原作者イアン・フレミングの諜報員としての実体験をベースにして描かれたのがこの作品なのですが、主人公の名前は俳優が変わってもずっと「ジェームズ・ボンド」、上司は「M」、技術開発担当が「Q」、秘書役の「ミス・マネーペニー」といった具合に、主要な登場人物の愛称と立ち位置は変化することがありません。しかしながらその詳細な人物像が作品によって揺れ動いたり、新たな一面を見せたりすることがファンを引き込む要因になっています。

また「ボンド・ガール」と呼ばれるヒロインと敵役はほぼ毎回変わるのですが、その時々のトップスターが抜擢されることでも有名です。ちなみに、『NO TIME TO DIE』のヒロインは前作続投のレア・セドゥ、敵役はボヘミアン・ラプソディで主演 フレディ・マーキュリー役を務めたラミ・マレックが演じます。

更に、シナリオにおいては勧善懲悪とは言い切れず、時勢を反映した国際問題をテーマに取り上げ、本当の悪は誰にでも介在する余地があるという問いを作っているのも心を打たれる点です。

 

上記のように、『007』は伝統を重んじる英国の映画らしく、毎回設定を守りながらも細部の変化や最上級のキャスティングとシナリオで楽しませてくれるシリーズです。そのため、今年10月、初代ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーが新作の公開を待たずにこの世を去ってしまったことは大変残念に思います。彼は英国王室からナイトの称号を授かっており、今年90歳でした。心からご冥福をお祈りいたします。

こだわり抜かれた小道具

上記に付随して、主人公ジェームズ・ボンドには譲れない様々なこだわりがある、という設定があります。例えば、お酒はシェイクではなくステアで作るウォッカマティーニ、身につける時計はROLEXではなくOMEGAだったりといった具合です。そのためより英国紳士たるボンドにふさわしい衣装や小物を、ということで、英国をはじめ世界中の名門ブランドがこれでもかというくらいに最高級の品を映画のために用意します。最たるものは高級スポーツカーメーカーのアストンマーティンで、1台数億円もする映画専用の車を作成、そのドアを劇中で吹き飛ばしたり川に沈めたり、木っ端微塵に爆破したりと、まさに採算度外視のプロモーションを実施しています。モブのように雑に転がったり穴だらけにされる車たちも実は1000万以上の高級車ばかりです・・・。

我々が映像作品を作るときに頭を悩ませる要因の一つが限られた予算で如何に良いセットや美術品を揃えるかということなので、上記のように一流のパートナーがスポンサーについてくれるというのは本当にありがたいですしとても興奮することだと思います。

限界ギリギリの撮影手法

さて、いよいよ撮影手法に移っていきたいのですが、007といえばスパイ映画ですから、公開される時代で常に先端を行くアクションシーンを撮影を実施することがファンの心を掴んでいます。具体的にはワイルドスピードより先に氷上のカーチェイスに挑んでいたり、高層ビルの更にクレーンの上でパルクールをした末に殴り合いをしたり様々です。また、ミッション・インポッシブルやキングスマンなど、比較的若手が派手に動き回るスパイ映画と比べ、007は中年にさしかかった俳優を主人公として起用するので、役者の演技からもギリギリ感が滲み出てくるのが見どころです。特に5代目ジェームズ・ボンドを演じるダニエル・クレイグになってからはスタントを多用しないので、「よくこの歳でこれを撮ったな」という感想を覚えます。実際、ダニエル・クレイグは何度となく撮影で大怪我を負っており、「僕にも自分の人生があるから・・・」と一度今作のオファーを断ったといいます。各メディアでも今作がラストになるだろうと囁かれています。

 

撮影手法の中でも特に凄まじいのが、サム・メンデス監督が『スペクター』で試みた4分超えのワンカット撮影です。おそらく「クレーンからスタビライザーつきカメラを下ろして、手持ちで撮って、またクレーンに乗せる」、いやもっと複雑な行程が行われていることでしょう。背景のエキストラの人数もあり得ないですよね。メキシコの「死者の日」をそのまま作ってしまうわけですから。

豪華なオープニングアニメーション

007シリーズはその冒頭で実写を加工したオープニングアニメーションが流れるのも定番になっていて、今作はどんな感じかな?と予想するのも楽しみの一つです。毎回とてもクオリティが高く、一気に世界観に引き込まれるトリガーになります。一体何時間制作にかけているのか不思議です。

また、テーマソングやBGMに対するこだわりも凄まじく、 『skyfall』ではAdele、最新作「No Time To Die」ではビリー・アイリッシュが、映画のタイトルと同名の楽曲を完全書き下ろしで提供しています。

まとめ

何しろ25作もありますので、本記事だけでは語りつくせぬ魅力や技法がたくさんあります。少しでも興味を持たれた方は、ダニエル・クレイグ作品から急激に人気を拡大しているので、そちらをとっかかりに見てみていただければと思います。きっと撮影や編集の現場を想像しただけで圧倒されることと思います。

これまでどんな時代の苦悩にも屈しなかったボンド映画。コロナにも打ち勝って、これからも「007を盛り上げるためなら国を挙げてなんでもやるんだ」という英国民の愛国心と共に発展してほしいものです。いつかまた「007は二度死ぬ」以来の日本ロケをやってくれないかな。。。