ストリートダンスが持つ、新たな可能性を提案する映像にしたかったんです。
ディレクションをしました相場です。
今回各方面に我儘を通し、プロダンサーのTAIKIさん、トラックメーカーのjaylen shawさんにご参画いただき、
TAIKIさんの地元である岐阜県飛騨市のまちなみを、ハウスダンスとともに巡りました。
この作品に懸けた想いや裏側についても知ってもらえると嬉しいなと思い、いくつか記事をまとめてみました。良ければお付き合いください。
制作の経緯
大学生時代にストリートダンスに大ハマりし、夜な夜なダンスダンスの日々を送っていました。
自分の中では、嬉しいことも悔しいこともダンスを通じて学んだと言っても過言ではないなと思っています。
そんな僕の青春そのものであるストリートダンスに、何かしらの形で恩返しができるといいなぁと、予てから考えていたんです。
日本のストリートダンスシーンとお金の話
日本のストリートダンスのレベルは世界的に見ても物凄く高いんです。
しかし、こと市場規模やプロダンサーの収入事情を覗いてみると、市場規模はポテンシャルに対して低いですし、お金の稼ぎ方も旧態依然としているんです。
同じストリートカルチャーである、スケートボードやラップ、HipHopと比べてみると、メディア等での露出量の差で何となくお分かりになるかと思いますが、市場規模感で言うと大きく差があります。
言葉を隠さずに言えば、ストリートダンスはどこか過小評価されているし、宝の持ち腐れ感が否めないんです(素人立場が申し上げるのも大変おこがましいのは重々承知しております・・・。)。
お金のためにダンスをやってるんじゃない!ってダンサーの方も多くいらっしゃいます。
が、日本のストリートダンスシーンがもっと注目をされて、更にもっと発展する為には、新しいアプローチがあってもいいんじゃないか、と前々から考えていました。
日本のストリートダンサーとメディアと映像の話
そんな経緯で、映像という方向性で何か出来ないかな、と思い立ったのです。
ストリートダンサーがTVやCMに出演にしていることがしばしばあります。
それを見ていて、いつも違和感があったんです。
「いや、もっとかっこいいんだけど!」と。
TVやCMはいろんな制約があるので当然なのですが、どこかダンサーが”賑やかしピエロ”的な飛び道具として扱われている印象を受けるのです。
一方、MV的にダンサーをとにかくカッコよく映した作品もネットの海に存在しています。
カルチャー感が大事にされていて、ダンサー好みな仕上がりになっているのですが、
もっと門戸が広く、いわゆる一般ウケも良いと、発展性があるんだろうなぁと思っていました。
今回の企画の話
そんなことを常々考えていたこともあり、
「ストリートダンスの魅力を妥協せずに伝える。」
「ダンスを知らない人も映像を楽しめる」
この2つを両立したものにしたいなぁと考えていました。
今回ご出演いただいたTAIKIさんは、僕が通っていたダンスレッスンの先生で、上述したようなことを前々から相談していたんです。
ある時、TAIKIさんが「地元を盛り上げるような活動をやりたい」とおっしゃっていたんです。
その発言がヒントとなり、今回の企画が生まれました。
日頃、クライアントワークでやっている制作観点と、ストリートダンスを組み合わせることで、日本のストリートダンスシーンに新しい可能性をもたらせるんじゃないか?
そんな淡い期待感を抱いて始まりました。
制作上で大切にしたこと
第一にストリートダンスの作品としての基礎基本を徹底することでした。
オンビート(※音楽に対してダンスのテンポ感が一致していること)であること、カットが変わっても一連のムーブが途切れ途切れにならないことを妥協せず作り込みました。
そこに、飛騨の美しいロケーションと映像の面白さを引き立たせるカメラワークを組み合わせることで
ダンスを知らない人でも映像自体を楽しんでもらえる様にこだわりました。
ダンサーの”アート作品”でもあり、
「行ってみたいな!」と思わせる”観光PR映像”でもある、
そんな両面を持つ欲張りな映像に仕上げたいな、と思っていました。
まとめ
今この時代でしか映せない土地の風景と、この瞬間のダンサーの表現を、
映像で切り取り残し、届ける。
刹那的であり、永劫的でもあって、
映像の持つ力ってすごい、と改めて実感したプロジェクトになりました。
bacterのコンセプトに基づいた、実験的な映像作品だと思っています。
実験はまだ始まったばかり、これからも研究を続けていけたら嬉しいな、と思っています。