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「2017年印象に残ったミュージックビデオ10選 前編」

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YouTubeがスマホでどこでも見れるようになり、PCでいつでも好きな時に好きな映像が見られるこの時代、
ミュージックビデオが広告の一環としてではなく、むしろ主役として存在している作品が増えてきたように感じます。

その中で、2017年に見た映像の中から特に「ミュージックビデオ」ならではの表現を様々な角度から探っていると感じた作品を10本選びました。【前編】

 

1 D.A.N. -SSWB

 

渋谷に集まる若者のリアルを切り取った「距離感」にまつわる物語です。この作品では他者との切断線を越える瞬間にそれぞれの人物が立ち会います。世界と不定形に入り混じりながら存在している他者に対し戸惑いを覚えつつも、途切れることのない自分自身の存在を微かに感じはじめます。他者の輪郭がほどけてしまうからこそ、自分が生きているのは紛れもなく自分自身の人生であるという実感がくっきり浮かび上がってくるのかもしれません。

 

 

2 lil peep -Awful things ft lil tracy

 

浮力の及ばない場所でも、息継ぎを求めるかのような率直かつ凄絶で破壊的な作品です。

それはもちろん魅力だけれども、その姿があまりにも痛々しく、ある意味ドキュメンタリー的にも感じられます。”When I die You’ll love me”という投稿をインスタグラムに残した翌日の2017年11月15日に薬物の過剰摂取により21歳という若さで亡くなったlil peep。この作品では余裕がない状態だけれども、そこには欺瞞がなく自分をなんとかして救い出そうとする生前の強い意志を感じ、胸が締め付けられるような思いがしました。

 

 

3 HAIM-WANT YOU BACK

 

大人として生きていくなかで日々大切な何かが失われていくように思うことがあります。自由で軽やかな表現なのか、豊かな感受性なのか、純真な創造性なのか。きっと、若かりし頃には当たり前のようにあったはずの何か。そんな感情や心の揺れ動き、大人の目にはもう見えなくなってしまった部分をこんな振り付けで表現してみました。なんてね!

 

 

4 Skepta – Ghost Ride (ft. A$AP Rocky & A$AP Nast)

 

 

UKグライムシーン最重要アーティストであるSkeptaのEP「Vicious」からの1曲です。紫煙漂う死の匂いが充満した世界がサイケデリックに表現されていて見応えがあります。“Life is like a movie”と綴られたリリックによって、この陰惨な世界が私たちにとっては非日常でもどこか遠くでは日常として存在するかもしれないということをふと思い起こさせます。ノイズやグリッチを多用したVHS風の映像は今年も多く見かけましたが、その中でも特にこの作品は種々の手法を駆使し飽きることなく私たちを楽しませてくれるでしょう。

 

 

5 Jorja Smith X Preditah – On My Mind

 

 

寛容でいて無関心。そんな人々を漠然と拒絶し、厭世観に浸っている心境を朧げに映しているかのような、つい深読みをしてしまうほど想像力を掻き立てられる美しい雰囲気で満たされています。

人種などの均質な人々によって構成された音楽共同体もあれば、多種多様で複雑な繋がりを持った音楽共同体もあります。例えば前者だとヒップホップ、後者だとこの作品のような世界でしょうか。自分が集団において異質な存在になるかもしれないという恐怖を孕みつつ音楽が鳴っている間だけは全員が一つになる。音楽にはそうさせる”何か”がある。そんな淡く儚い夢を見ました。

 

 

 

Fukumitsu