Interview||Mai Akiyama

【INTERVIEW】自分の枠を超えるために「こだわりなく要素を詰め込んだ」/OVERLOAD

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今月新たに公開されたドローイングムービー『OVERLOAD』。

2019年の年賀ムービー以来久しぶりにbacterの監督を務めた、安藤興作にインタビューを実施しました!

 

安藤興作

新潟県長岡市出身/長岡造形大学大学院 絵画専攻 修士課程修了/2017年エレファントストーン入社。大学院では、絵画(油彩、ドローイング)、映像、音楽、パフォーマンスなどの複数のメディアを用いて、私個人の経験や今日の社会に漂う雰囲気(消費社会、コミュニケーションの過剰と不全のような)をモチーフに作品を展開。2016年には、自主短編映画を制作し、コミュニケーションにおける相互理解の困難さを表現することを試みた。

 

——年賀ムービーを除いて、初めてのbacter制作おめでとうございます。生みの苦しみはありましたか?

5月の段階でいろいろとやりたいことが頭に浮かんではいたのですが、時間ばかりが過ぎていって胃がキリキリしていました。

 

 

4月〜5月に開催されていた小金沢健人展 『Naked Theatre –裸の劇場– 』へ行って、その展示作品にインスピレーションを受けたんです。その展示では照明とスモークマシーン、音が使われていて、人がいなくても作品にストーリーを持たせらせたらおもしろそうだなって。

 

人を撮るとどうしてもそこに目がいきやすいですよね。そうすると、自分の伝えたいことが伝わらないんじゃないかって不安なんです。僕は人を撮らずして人の精神的な構造に迫りたかったので、今回はできれば人を撮影したくはありませんでした。

 

ただ、それは自分が変に固執していただけでしたね。実際に撮影を進めていく中で、人がいない作品にストーリーを持たせるのは難しいんだと気が付きました。照明の力だけでは、車が走行しているような画を撮るのは難しいんですよ。

 

だからその場の判断で、人が運転している画を撮ろうと決めました。やっぱり人がいるほうがいいなって。

 

よく考えれば分かることも、自分の作品を作るとなるとどうしても見えてこないところがあります。

 

 

 

 

——撮影当日の判断だったんですね。今回は私も撮影を見学させていただきましたが、スタジオも雰囲気のある空間だったように思います。

「照明」と「スモーク」を使うことはあらかじめ決めていたので、それらが活きる暗い空間のスタジオを探しました。そして見つけたのが、神奈川県横浜市にある「A STUDIO」。

ちなみに、映像に出てくる車もスタジオの方にお借りしました。

 

 

——今回の映像制作で何かこだわったポイントがあれば教えてください。

要素としては3つあります。

 

まずドローイングをアニメーションにして入れたこと。これはずっとやりたかったことです。

もう1つはVHSの質感ですね。今アプリでも流行っているように、ビデオカメラで撮影したようなちょっとノイズが入った質感を取り入れました。

そしてモノクロです。今年のアカデミー賞で3部門受賞した映画『ROMA/ローマ』はあえてモノクロにしていましたよね。

今作にはそういう最近見たもの、聞いたことなどを詰め込みました。

 

なので、こだわらないことにこだわっていたかもしれません。

 

 

——撮影後の編集作業は、どのように進めていったのでしょうか?

アニメーションを作る際にも具体的にこうしたいという指示は出さずに、『みんなのやりたいことや提案を尊重したい』と言っていました。

 

いろいろな要素をこだわりなく詰め込んでいる点が、タイトルの”OVERLOAD(超過負荷)”に通じています。

 

 

——みんなにお任せするスタイルだったんですね。

以前FILM MAKINGの記事に書いたようなコンセプトもありましたけど、撮影当日もスタッフにはそういった話は全くしていませんでした。

 

なぜかというと、こういう意図で、こういったストーリーを作りたいって段取りをきれいに組んで進めていっても、自分が思い描くおもしろい作品には届かないんじゃないかと思うんですよ。

 

 

 

僕、最近金魚を飼っているんですけど……

(↓この金魚です)

 

金魚って水槽の中でしか生きられないじゃないですか。作品もそういう風に、一つの限られた枠の中でしか考え事ができないのだとしたら、なんて狭いんだろうって思っちゃうんですよ。

 

だから、自分がコントロールして作った作品というよりは、みんなが好きなものを詰め込んで、自分のイメージを超えていく作品ができたらいいよなって思いますね。

 

 

——bacterのようなオリジナル映像の制作は特に、そうやって取り組む楽しさがありそうです。

いろいろな作品を見ていると、自分と切り離された他人の作品だからおもしろいなって思うんですよ。その人の強烈な体験によって作られたものであればあるほどおもしろい。

 

強烈な体験によって作られたものとか、何かに固執しているものとかを見るのが好きで、それを自分でもできたらいいなって思います。

 

みんな、自分を持っていて羨ましいです。

 

ただ、自分の作品はどこまでいっても自分の作品。

客観的なおもしろさを感じるのは不可能かもしれないですね。

 

 

(Photo by Nana Bannai)


bacterをご覧になったみなさんからのご感想をお待ちしております!

Twitter:@bacter_es
Instagram:@es_bacter

本編を観る:「OVERLOAD」

記事を読む:
【FILM MAKING】OVERLOAD の制作を振り返る
「OVERLOAD」のインスピレーションを得た作品