Interview||Mai Akiyama

【INTERVIEW】架空のCM『KOICAMO』はいかに生まれたか

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架空のマッチングアプリのCMという枠組みで制作されたショートムービー『KOICAMO』。

今作のディレクターを務めた竜口昇にインタビューを実施し、制作に関する話を伺いました。

 

竜口昇
1991年 福岡県生まれ。男三人兄弟の末っ子。中学生の時にガス・ヴァン・サントの『エレファント』を観て洗礼を受ける。2014年、同志社大学文学部を卒業。大学のサークルで映像制作を始める。その後、映画美学校に入学し、映画作りのノウハウを一から学ぶ。美学校在学中には数本の短編映画とミュージックビデオを制作する。卒業後は自分のスキルを活かせる会社を希望し、2017年エレファントストーンに入社。

 

——まず最初に、『KOICAMO』の企画背景を教えてください。

bacterにセリフのある作品が一つもなかったので、セリフありのフィクション作品を撮りたいというのが第一にありました。ただ、それだけだとあまりにも漠然としているので、「架空CM」という枠組みを作ったんです。

何のCMにするかは悩みましたね。生命保険や銀行などさまざまな可能性を考えたんですが、ある日ふと「マッチングアプリ」が思いついて。これだったら面白い作品になりそうだと思いました。

 

機能を把握するために10個くらいのアッチングアプリに登録して、CMも探せるだけ探してチェックしました。すると、どのCMも似通っていることが分かったんです。

 

今後、既存のマッチングアプリにはないブランドイメージを作りたい、訴求をしたい、という新サービスが市場に出てくる可能性も少なくはありません。いつそのようなサービスからCM制作依頼がきてもおかしくないので、今までにないテイストのCMにしようと決めました。

(既存のCMの傾向は「マッチングアプリの広告映像の狭さについて」の記事で紹介しています)

 

——どうして舞台をレコード屋にしたんですか?

最初からボーイ・ミーツ・ガールの話にしようとは決めていたんですが、見知らぬ男女が出会う、かつ素敵な雰囲気のCMになりそうな場所として第一候補にあがっていたのは本屋でした。ただ、本屋のロケ地が意外にも少なかったんです。

そこで第二候補のレコード屋を探してみたら、たくさん見つかって。何ヶ所かロケハンをした結果、最も広々としていて撮影がしやすい「Ella records 下北沢」を選びました。

 

 

——前回のMagazineの記事でレコード屋を舞台にした映画作品を紹介していましたね。あれらの作品を参考にした部分はあるのでしょうか?

レコード×映画という切り口でまとめている記事を見たことなかったので、それをテーマに書いてみました。もともと知っている映画と、新たに探した映画を紹介しています。

 

3番目に紹介している『ビフォア・サンライズ』に、狭い視聴室で男女二人がいるシーンがあるんです。そのシーンを参考にしたというわけではありませんが、あんな風に二人が近い距離にいなければならない状況をつくりたいとは思っていましたね。

本作では横に並んでレコードを視聴する演出をしました。

 

 

本来は、一つが店内(スタッフ)の検盤用で、もう一つがお客さんの視聴用。なので、あのようなシチュエーションにはならないんですけどね。

 

——制作過程を振り返って、何かこだわったことがあれば教えてください。

こだわりたかったことがあります。冒頭で男性がレコードをディグる(=探す)シーン。

あの手つきなんですが、レコード屋に通い詰めている人たちは、パパパッて素早いんですよ。それを再現したかったんですが、難易度が高くてイメージ通りとまではいきませんでしたね。

レコード好きが観たら、恐らくあの手つきが目についてしまうと思います。

 

——そうなんですね! 普段レコードを聴かないので、全く知らない世界です……。

キャストの2名もレコードを聴くのも触るのもはじめてとのことでした。

一般的にもそういう方のほうが多いとは思いますが、最近はレコードブームが再燃しているみたいですよ。スマホで手軽に音楽が聴ける時代だからこそ、アナログの良さが再認識されてきているようです。

僕も1〜2年前からレコードを買うようになりました。ジャケットが大きくてかっこいいんですよ! それを所有していたいんですよね。

 

——そういえば、作中で使われているBGMも印象的でした。どのように選曲されたのですか?

最初の曲は70年代くらいのアメリカのカントリーミュージックです。最後の曲はやっぱりソウルミュージックじゃないと盛り上がらないと思い、時間をかけて探しました。

2曲とも2018年くらいに作られたものですが、70年代、80年代のレコードにも聞こえる曲調のものを選んでいます。

 

<Photo by Nana Bannai(坂内 七菜)>

 


 

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