Interview||Mai Akiyama

【野崎りこん × 奥野尚之 対談】『空を分かつ feat. tedeo』MVの製作を振り返る

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野崎りこんが昨年8月に発売した2ndアルバム『Love Sweet Dream LP』より、『空を分かつ feat. tedeo』のMVを当クリエイティブチーム/メディア bacterで製作、公開しました。監督はMV『Yo』『アナザヘヴン』に引き続き、奥野尚之です。

 

MV公開直後には、ファンのみなさんからは『待ってました!』『MVがアップされて嬉しい』『素敵な世界観だった』といった喜びの声が続々とあがり、本作のMV化を待ちわびていた様子が伺えました。

 

そして今回は、【野崎りこん × 奥野尚之】の対談が実現! 日頃の楽曲づくりや、『空を分かつ feat. tedeo』MVの製作について二人に語っていただきました。

 

野崎りこん:兵庫県神戸市出身のラッパー。2009年、インターネットを中心に活動を開始。 電波少女、OMSB(SIMI LAB)等のアルバムに客演で参加。2017年6月7日に1stアルバム「野崎爆発」を、2019年8月に2ndアルバム「Love Sweet Dream EP」をリリース。

奥野尚之:神奈川県出身。慶應義塾大学を卒業して2週間後に、故あってロンドン芸術大学へ2年ほど映像とアートを一から学びに行く。留学中はビデオアート、短編映画や写真を中心に、作品を製作。人物とその人が生きる場所との関係性を意識したテーマ、構図、物語を考えることが好きで、どんな製作でもそれを大事にしたい。

 

身近なもの、好きなものの固有名詞を歌詞にする

奥野「2019年の夏にレーベルの方からMV製作のお話をいただいたことがきっかけで、りこんさんの楽曲を聴くようになりました。そして、MV製作を通じて、ハマりましたね。

最初に聴いたのは『Ima』という曲です。

 

 

 

この曲は『エンジェル伝説』という漫画のタイトルから始まるんですよ。学生の頃に読んだことがある漫画だったので、きっと同じような景色を見てきたのかなって、景色を共有したような感覚になりました

 

 

野崎「自分の身近なもの、好きなものの固有名詞を使うようにしています。そもそも曲を作るときに、同じ景色を聴いてくれる人にも感じてもらいたいという気持ちが起点になっていることが多いですね。なので、そう言ってもらえると嬉しいです」

 

 

奥野「普段自分達が社会生活の中で感じていることが、いろいろな作品とかカルチャーとかの固有名詞が出てくることによって、同じ思いやその景色を共有している感覚になる。それにより曲のテーマが印象づけられる感じがします。出来事というよりは、景色が浮かんできます。

『空を分かつ』だったら例えば『仏壇に供えられた鯛の砂糖菓子』とか『歩道橋の向こう団地一階のプチ商店街でプチ少年少女がプチ資本主義ごっこ』とか……風景が浮かぶんですよね」

 

 

野崎「映像的かもしれないですね。実体験とそのフィクション作品のリンクする部分を、歌詞に落とし込んでいるような感じです」

 

 

2019年8月にリリースされたアルバム『Love Sweet Dream LP』より、『Yo』『アナザヘヴン』に次いでMV化されたのが『空を分かつ feat. tedeo』だった

 

 

 

奥野「僕は正直、「Love Sweet Dream」のアルバムの楽曲は全部MV化したいくらいです。一つひとつの楽曲に個性があって、それぞれ違ったイメージが湧いてくるんです。

その中でも特に映像としてイメージできるなと感じたのが『Pinky Cloud Castle』『Lucy Lucy feat. haruru犬love dog天使』『空を分かつ feat. tedeo』の3曲でした」

 

 

野崎「ファンの方から『空を分かつのミュージックビデオが見たい』という声をいただいていたので、素直にこの楽曲で製作することにしました。ただ、ミュージックビデオに関しては僕の中に漠然としたイメージしかなかったので、今回は奥野さんにほぼお任せするかたちでしたね」

 

 

奥野「それこそMV製作にあたって、最初にりこんさんからいただいたのは、『漠然とした別れ』っていう言葉でしたね。

そして、女性二人を登場させるっていうのは最初の打ち合わせですんなり決定しました。歌詞では“僕”って言ってるけど、それが女の子目線のような印象で」

 

 

野崎「歌詞に“二人”で映画を観に行くくだりがあるんですけど、それが“女性二人”のイメージでした」

 

 

奥野「キャスティングしていて面白かったのは、出演している荒川ちかさんの一人称が“僕”だっていうことでした。だから結果的に“僕”で重なったんですよね。
 
でも、女性二人は決まったけれど、彼女たちがどんなテンションで、具体的に何をするのかっていうのは悩みました。この楽曲を聴いた時に“情景”は浮かんだんですが、それを鮮明にしていくのは難しかったです」

 

 

 

二つの異なる別れがテーマになっている

 

奥野「それと、りこんさんも出したかった。二人だけだとプライベートになって、彼女たちの感情の動きだけに世界観が狭まってしまい、ドラマになりすぎるような気がしました。それでも確立するんですけど、”漠然とした別れ”というテーマの”漠然とした”という部分に自分の中では合致しなくて。

第三者のりこんさんが、狂言回しみたいな存在として間に入ることによって、カットの移り変わりも自然にするのもそうだし、いろんな見方ができる世界観になるのかもと考えましたね」

 

 

野崎「そうだったんですね。

実は『空を分かつ』は、1番と2番で異なる別れがテーマになっているんですよ。1番はおじいちゃんが亡くなる別れ、2番は友だちと疎遠になる別れ。それぞれ異なる別れをサビでまとめるという楽曲だったんですが、うまくその間を映像でつないでくださったと思います」

 

 

奥野「ありがとうございます。歌詞を一つひとつそのまま映像にリンクさせるというより、歌詞で浮かぶ風景や、りこんさんが曲を作る上で影響を受けたり、大事にしている作品や文化の世界観に通じるものにしたいなと思ってました。自販機のシーンは、2003年の邦画『blue』のオマージュですもんね。

ちなみに、今回のMVでりこんさんが一番好きなシーンはどこですか?」

 

 

野崎「冒頭の車の中に乗っている二人の顔がアップになるシーンですね。MV全体の印象付けがされているなって感じました。

もう一つが、最後の二人の振り返りがずれるシーン。あのすれ違う感じにグッときて、すごく好きでした。あと、最後のスタッフロールが流れるところもですね。楽曲が終わった後に環境音(実際に録った車の音など)に変わるのがかっこよかったです」

 

 

奥野「嬉しいです、よかったです!」

 

 

野崎「ファンの方も『イメージ通りだった』と言ってくださっていて、嬉しかったです」

 

 

All photo by miri saito (https://www.mirisaito.com/)

 

今回製作した『空を分かつ feat. tedeo』MV


 

アルバムの詳細はこちら>>『Love Sweet Dream LP