【INTERVIEW】2019 New Year Movie『REBORN』で炎を撮った理由
2019年1月7日に公開された『2019 New Year Movie「REBORN」』は、再開発真っ只中の渋谷の街と、新しく生まれ変わろうとするエレファントストーンを重ね、何かが起こる予兆、または劇的に変わっていく様を描いた作品です。
ソファが燃えるシーンに度肝を抜かれた方も多いかもしれません・・・。
▽ぜひ再度ご覧ください。
今回ディレクターを務めた安藤興作に、年賀ムービーの制作に関してインタビューを行いました。
安藤興作
新潟県長岡市出身/長岡造形大学大学院 絵画専攻 修士課程修了/2017年エレファントストーン入社。大学院では、絵画(油彩、ドローイング)、映像、音楽、パフォーマンスなどの複数のメディアを用いて、私個人の経験や今日の社会に漂う雰囲気(消費社会、コミュニケーションの過剰と不全のような)をモチーフに作品を展開。2016年には、自主短編映画を制作し、コミュニケーションにおける相互理解の困難さを表現することを試みた。
炎への執着心があった
——学生時代は油彩を専門にされていたとのことですが、どのように「映像」と関わるようになったのでしょうか?
学部と大学院合わせて4年ほど油彩を描いていて、大学院1年の時に油彩を基盤とした自主映画のような映像作品を撮り始めました。
油絵は、映像でいうところの「1フレーム」。これを動かすことによって、キャンパスの四角い枠の中に、一つの世界ではなくもっと多くの世界を閉じ込めたら、きっと面白いって思ったんです。
当時ちょうどYouTubeが流行し、人が見てくれる土壌があったので挑戦してみました。
インターネット上で「こんな映画を撮りませんか」と協力者の募集をかけ、集まった人たちで僕の知り合いの家に10日間寝泊まりしながら映画を制作しました。その作品の大目玉として、ベンチを燃やしたんです。
——ベンチを燃やしたんですか! 今回のソファが燃えているシーンとリンクしますね。
はい。制作メンバーの中にいた美術屋さんがベンチを作ってくれて、それを燃やす撮影をしたんです。
ただ、2カメのうち一方のテープが切れていて、思い通りの画を撮影できませんでした。その失敗からずっと炎への執着心があり、今回はリベンジとしてソファを燃やすシーンを取り入れました。
あと、前回のbacterのプロジェクト(citrusplus 1st single『fall』MV)で水中撮影をしていたので、「”水”の次は”火”だ」っていう想いも重なりましたね。
——そうだったんですね。とても印象的なシーンでした。
炎には始まりの意味があるんです。そもそも人類の文化も火から始まったところがありますよね。
今回の年賀ムービーではあの炎が心臓であって、生まれ変わるという意味づけの象徴的なものになっています。
——撮影場所はどこだったんですか。
千葉県君津市にあるAQUASTUDIOです。精神的な意味合いを持った火を演出するためには、屋外よりも屋内が適していると思いました。
一発勝負だったので、どんな風に燃えるのか期待を抱きながら、いざ本番。現場にいたスタッフみんなが「やばいやばい!」って焦ってしまうほどにボーッと燃え上がりました。「燃やすならこうだ」という自分なりのイメージがあったのですが、満足のいく燃え方でしたね。
目では見えないところに目を向ける
——炎以外で何かこだわったポイントはありますか?
あまり寄りで撮影をしていません。接写でモノをモノとして捉えるようなイメージではなく、空間の中にあるそのものを描こうとしました。
——それは、どうしてですか?
僕自身、好きな音楽や映像に偏りがあるんですが、今の世の中は自分好みのものを見つけにくいんです。目の前にはたくさんあるのに「これも違う、あれも違う……もっと探さないと」ってなるんですね。
もともと、近くではなく手の届きにくいところにあって、手に入れた時に「やった!」って気持ちが高揚する感触が好きなんです。映像も、直接目に入るものよりも、それを撮った目的や隠された意味などの背景が気になります。
今回の年賀ムービーも、「ソファが燃えている」とダイレクトに受け取るのではなく、
「なぜ燃えているんだろう?」
「何を意味しているんだろう?」
と考えながら見ていただくと面白いかもしれません。
2019年は生まれ変わる年
——「REBORN」というテーマの背景について教えてください。
渋谷の街は「100年に一度」と言われる大規模な再開発の真っ只中。渋谷駅からエレファントストーンのオフィスまでの道中は一部通行止めとなり、建物の取り壊し工事が進められています。
あの場所に慣れ親しんだ方は、もしかすると「どうして再開発する必要があるのか?」と疑問や憤りを感じているかもしれません。それでも、ただ流れに身を任せざるを得ない状況です。
2018年から予兆はありましたが、2019年はまさに、生まれ変わるためのサナギのような年なのではないでしょうか。
——来たる2020年へ向けての準備期間ですね。
そうですね。そしてそんな渋谷の再開発に、生まれ変わっていくエレファントストーンを重ねました。
組織として発展をしていくためには、既存の仕組みや制度をなくしたり、改良したりしなければなりませんよね。今はその段階にあります。
抽象度を上げてみてみると、人類や都市、会社など全ての物事が発展していく過程には共通点があります。何かしらの破壊や争いが存在していて、そういったネガティブな側面からは逃れられないんですよ。
きっと、そうしないと発展しないんだと思います。
年賀ムービーをご覧になったみなさんからのご感想をお待ちしております!
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