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【INTERVIEW】Pink Elephantは「振り切った映像にしたかった」

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今年4月に公開した『Rock this Place』に続き、今作『Pink Elephant』を監督した横山にインタビューを実施。

撮影から編集まで短期間で行っていた今作の制作秘話を語ってもらいました!

 

横山勇樹

1989年生まれ。御殿場出身。4歳からシカゴへ。ミネソタ大学へ進学し、映画学と比較文学をダブルメジャーで卒業。日本へ帰国しゲーム会社へ就職しようとするも、ディレクターの嶺に誘われエレファントストーンへ入社。モーショングラフィックやアニメーションを得意とし、語学力を活かし多角的な視野で映像を制作する。諸星大二郎のファン。好きな映画は、英国王給仕人に乾杯!、ウォーターシップダウンのうさぎたち、生きる。

 

——前回の『Rock this Place』は「撮りたいもの→テーマ→具体的な撮影内容」と考えやすいワークフロー。今作は逆で、「撮りたいもの→具体的な撮影内容→テーマ」というワークローで難しかったとのことでしたが、撮影前から作品のイメージは決まっていたのでしょうか。

いくつか参考映像がありました。

一つは、前からVimeoでお気に入りに登録していた「JAGUAR PROCESS」。

JAGUAR(自動車)のCMを制作した方が、その過程を映像にしているんです。

回転しながら迫り来る感じ。

エフェクトで鏡を使っていたり、カットの切り替わりが早かったり。

音楽も激しめで好きです。

 

次に、「“Captain Marvel” Main-On-End Title Sequence」。

この映像はネタを探している時に見つけました。人物と映像素材を重ねているんですよね。

顔の寄りが映ったり、立ち上がったり。ざっくり「こういうイメージで作りたいな」と思いました。

ただ、これはカットの切り替えがゆっくりですしモデルも止まっているので、動くようにはしたかったです。

 

あともう一つ、エフェクトで参考にしたのが、The White Stripes の「Seven Nation Army」。

僕が中3、高1の頃の曲です。

これもずっと迫り来る感じ。

三角のシェイプは『Pink Elephant』でも2カット入れてるんですけど、これが参考になっています。

この3作が今回の映像のタネですね。

 

——確かに、いずれの映像も『Pink Elephant』に通ずるものを感じますね。あと、BGMも世界観にマッチしていて印象的でした。

BGMは撮影前に2〜3曲を候補に入れていたんですが、ずっと決めかねていて。本当は、モデルにリップシンクをしてもらいたかったんですよ。でも曲が決まらなかったので、諦めてポーズだけしてもらうことにしました。

 

最終的に「この曲(インディアンミュージック)でいこう」と決まったのは、編集中にべーさん(ディレクター)に相談してからですね。映像にインディアン要素がないのですが、雰囲気と合っていますし、これでよかったと思っています。

 

BGM以外にも、べーさんにはいろいろと相談にのってもらいました。最初に自分で編集してた時は、やりたいことはあったのにうまくできず行き詰まっていたので、「もうちょっと、振り切りたいな」っていう話をしたり。

 

——振り切りたい・・・?

僕的に「これくらいダサくしたいな」っていうPVがあって。それがDua Lipaの「One Kiss」なんですけど、いい感じにダサいんですよ。

ダサいけど、振り切ってるからかっこいいんです!

これは背景をブルーで撮っているんですが、ご覧の通りエッジに青が残っていますよね。

しかも、ヘタな合成をしたり、Dua Lipaに謎の踊りをさせたりしている。

これ「かっこいい、おもしろいな!」って思うんです。

 

ちなみに、たっつー(ディレクター)が書いた「ダサ良いミュージックビデオ」の紹介記事で取り上げられて森高千里のMVもそうなんですけど、やっぱり青空と合成するんですよね。これは世界共通なのかもしれません(笑)

 

とにかく、これぐらいに振り切りたかったです。

もう納品までの時間も限られていたので、それよりまずはテーマを決めることにしました。

 

——それって、納品の何日前だったのでしょうか。

当日かな……月曜の当日に、べーさんと「サイケデリックな方向性にしよう」という話をしました。

 

まだ映像のタイトルも決めてなかったんですよ。

今年に入ってから、安田さん(ディレクター)とダンボの話をしたことがありました。僕、*映画『ダンボ』のピンクエレファントのシーンが好きなんですけど、「サイケデリック」というワードで思考を巡らしていたらそのシーンが浮かんで、今回のタイトルは「Pink Elephant」にしようと決めました。

(*映画『ダンボ』ではダンボがお酒を飲んでピンクの象たちの幻覚を見るというシーンがあります)

 

タイトルと方向性が決まって、それまで作っていた映像をガラッと変えましたね。

 

 

——具体的に、何をどういう風に変えたのでしょうか?

最初に自分で編集をやっているときは、モデルと素材を重ねたいって言いながらもあまり重ねていませんでした。素材の映像そのものがきれいだったので、全体の流れは「素材のカット」→「モデルと素材を重ねたカット」という感じでしたね。

 

べーさんが「編集していいですか?」って言って、いろいろと編集で遊んでくれました。
完成した映像はべーさんの編集がほとんど残っている状態です。モデルと素材を重ねたシーンが多くなりました。

 

エンドクレジットは、フォントを変えて、少しモデルに重ねる素材を変えたくらいですね。

前回の反省として、本編が終わってからエンドクレジットが始まるまでが、少し長かったという点がありました。エレファント会議で上映した時に、本編が終わった後にまばらに拍手があったんですよ。

今回は本編が終わってから、かなり早めに音楽を始めてみました。

 

——他にも、何か今作ならではのポイントがあれば教えてください。

鶴目さん(代表)ってCorneliusが好きじゃないですか。べーさんも好きなんですよ。僕も最近、「Point」というアルバムのライブに行きました。

 

そのアルバムのジャケットって、白い紙の右下にエアブラシの青い点がちょんってあるんですけど、素材の撮影中に「これもやってみよう」ってなって、水面に青いインクをこぼして撮りました。

そして、映像では画角もCDジャケットっぽく正方形に近いかたちにしています。

 

もちろん鶴目さんは気づいていて、「オマージュはエアブラシでやってほしかったなー」ってコメントをくれました(笑)

 

——素材の撮影は、本番へ向けて事前にお試しをしたのでしょうか?

通常は試すと思いますが、今回は試してないですね。

だから、撮影は昼から夜までかかりましたよ。

きれいに撮影できて満足しています!

 

——あと最後に聞きたいのですが、プロジェクト詳細ページに「この映像に象や蛇は出てくるでしょうか?」と書いてありましたよね。この映像に象や蛇は出てくるんですか? 探しましたが……

出てきません。

見えたときは、きっともう、やばいときです!笑

 

 

<Photo by Nana Bannai(坂内 七菜)>


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

ちなみに今作は「ウルトラワイドモニター」に合わせたサイズで作ったのだとか。もし同様のサイズのモニターをお持ちの方は、画面いっぱいに表示される迫力をお楽しみいただければと思います。

 

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映像を観る:『Pink Elephant

メイキング:
映像作品”Pink Elephant”ができるまで
“Pink Elephant”の制作で参考にした映像