Interview||Mai Akiyama

ディレクターから見た”佐原の町”とインバウンドへの見せ方 / TWO DAY TRIP IN SAWARA BY HOSTEL Co-EDO

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9月4日にbacterで公開された『TWO DAY TRIP IN SAWARA BY HOSTEL Co-EDO』。日帰り観光地として認識されている佐原(千葉県香取市)を、滞在型観光地へと発展させるという課題から企画がスタートした。佐原は成田空港や都心からのアクセスがいい町だが、それゆえに日帰りの観光客が多いのだという。

 

これを読んでいるあなたは、佐原という地名を聞いたことがないかもしれない。本作のディレクターを担当した菅野圭亮もそうだったとか。きっとそんな彼だからこそ、佐原の魅力を客観的な視点で引き出し、町の空気感や楽しみ方を映像として表現できたのではないだろうか。

 

はじめて訪れた佐原は彼の目にどう映ったのか? どんな想いを込めて映像を制作したのか……?
制作期間を振り返りながら真摯に語ってくれた。

菅野圭亮
1990年生まれ、愛知県出身。大阪芸術大学映像学科卒業。大学時代より短編映画やMVづくりに没頭。2016年にエレファントストーンに入社し、ディレクターとして多彩なプロジェクトに携わる。最近ハマっているのはAmazon Primeのドキュメンタリー『オール・オア・ナッシング マンチェスター・シティ』。

 

佐原は「古さ」と「美しさ」が融合した町

 

――今回の企画がスタートした当初、どんな心境でしたか。

「行ったことがない土地に行けるので、率直に面白そうだなと思いました。観光や旅行って、昔からあまりしてこなかったんです。

エレファントストーンに入社した直後に地方でおこなった撮影が、とても楽しかったのを今でも鮮明に覚えています。その土地土地に暮らす外国人に現地を案内してもらいながら、1日に3ヶ所くらい観光名所をまわって撮影しました。

行ったことがない場所に行ったり見たことのない景色を見たりすると、”非日常”を味わえるじゃないですか。ありふれた日常を過ごしていたので、まずは佐原へロケハンに行くのが楽しみでした」

 

 

――ロケハンではじめて佐原を訪れたんですね。なにか印象的なことはありましたか。
「町の真ん中に流れる川が印象的でした

これまで愛知、大阪、東京で暮らしてきましたが、ああいう川沿いの町並みは見たことがありませんでした。和の雰囲気や伝統的な建物が大切にされていつつも看板などは新しくなっていて……歴史を感じるのにきれいなんですよ。景観保護のために電柱も電線もなくて、本当に美しい町並みでした。

その日は若いカップルがデートしていたり、ご高齢の方々が団体ツアーで訪れていたりしましたね。年齢や国籍を問わず、色々な人が訪れる場所なんだと感じました」

 

伝統文化を大切にしながら、先進的な取り組みも

――そもそも、どうして佐原にはインバウンドが多いんですかね。
「2013年にタイで上映された映画『ファットチャント(ฟัดจังโตะ)』のロケ地になったことが影響しているようです。

あと佐原って、町全体でインバウンド向けに取り組んでいるんです。様々なお店で多言語のHPが用意されていたり、観光案内が表示されるモニターデバイスがあったり。HOSTEL Co-EDOにもIoTやICTを活用したサービスが導入されていました。言葉に不自由なく滞在できるのも要因なのではないでしょうか」

 

――映像ではHOSTEL Co-EDOの周辺でできる観光体験を盛り込んでいますよね。実際にHOSTEL Co-EDOには宿泊したんですか?

「はい、3日間の撮影時に宿泊しました。”バックパッカーが寝泊まりするようなところ”と言うとイメージしやすいかもしれません。他のゲストと一緒に宿泊するドミトリーと個室の部屋、共有スペースがありました。

『佐原の大祭』の開催日程に合わせた撮影スケジュールだったこともあって、僕たち以外にもお祭りに参加される方々が宿泊していましたよ」

 

 

――『佐原の大祭』のシーン、賑わっている様子が伝わってきました。

「関東三大山車祭りのひとつなんですよ。夏祭りと秋祭りがあって、年に2回、各3日間開催されています。

地域ごとに装飾された豪華絢爛な山車を曳き廻していくんです。高さ4メートルにもおよぶ大人形が飾られていて迫力がありました。それを曳く人と見物客の活気で溢れていましたね。カメラを回しながらでしたが、佐原の伝統を肌で感じられました」

 

”言葉”による説明はなし。”直感”で理解できる映像に仕上げた

――映像の制作過程で特に意識した点があれば教えてください。

「大きく3つあります。ひとつは、インバウド向けの映像なので、どこの国の誰が見ても直感で理解ができるようにすること。全方面に佐原の魅力が伝わるように、場所の名前とそこでできる体験を抽出してシンプルに仕上げています。

もうひとつは、映す場所の順番です。映像は2日間の時系列で進んでいるんですが、現実的にまわれるような距離感と順番にこだわっています。

あとは、映像を見た人に“佐原っていいところだな””行ってみたいな”と思ってもらえるようにすることです。それぞれの場所の良さが伝わるような色味にも気を配りました」

 

ーー制作スタッフにはどんな依頼をしたのでしょうか。

「社内のエディターに、タイトルの動きや出し方などを任せました。重視したのは4ヶ国語の表示です。

もっとも広く認識される英語、次いで中国語、そして日本語とタイ語、という優先度で表示されるようにお願いしました。すごくいい仕上がりになったので修正もありませんでした」

 

ーー音楽は「チャンネルNo.1」でも一緒にやっていた桶田さんでしたね。
「大学時代の友だちなんです。彼がこれまでに2枚アルバムをリリースしていて、その中のある1曲が特に気に入っていて。『こんな感じの音色で作ってほしい』という要望だけを伝えて、オリジナルで制作をしてもらいました」

 

佐原へ行くきっかけになれば嬉しい

ーー映像をご覧になった方へメッセージをください。

「佐原の街並みは最高ですから、ぜひ行ってみてください。夏と秋の年2回開催されるお祭りの日程に合わせて行くのがおすすめです。各3日間、計6日間あるので。実際に着物に着替えて、風景や舟めぐりも体験すれば非日常を味わえて楽しいと思います」

 

 

「そういえばこの前テレビを見ていた時に、たまたま流れた車のCMの舞台が佐原だったんですよ! あの街並みは佐原だってすぐに分かりました。国内外のドラマやCMのロケ地に選ばれていて、今後ますます観光客で賑わいそうです。

今回制作した映像も、誰かの”佐原へ行くきっかけ”なったら嬉しいです」

 

<Photo by Jin Peng(金鵬)>

 

映像を観る:TWO DAY TRIP IN SAWARA BY HOSTEL Co-EDO

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