Interview||Mai Akiyama

「考えさせられることが多々あった」10年ぶりの自主制作映像 / Same old stuff, different day.

#AfterEffects| #CG| #story| #VFX|
SHARE THIS ARTICLE

11月6日にbacterで公開された『Same old stuff, different day.』は、CGを中心とするエディターチームから発信する新しい映像を目指した作品だ。

 

本作のディレクターを担当した大西充は、「10年ぶりに自分発信の映像を作った」のだとか。無事に映像を公開した今は「また近々映像を作りたいと考えている」と、次回作にも意欲を見せている。

 

そもそもどのような動機でエディター中心の映像を制作したのか?  どのような部分に苦労したのか? 次回はどのような映像を作りたいのか? 話を聞いた。

大西充

1980年生まれ、三重出身。小さい頃から映画が好きで映像の専門学校へ。16mmフィルムで撮影や編集など貴重な経験を経た後、芝居の演出助手やステージ・イベント関係の仕事を経験。前職の経験から特にイベントのOP映像や展示会での企業VPなど派手な映像を得意としています。映画は、70’s 80’s のアメリカが好きで、監督だとウディ・アレン、脚本だとニール・サイモンが好きです。最近観た映画で面白かったのは2017年に公開された「人生タクシー」。

 

チームの技術向上と、アピールにつなげたい

ーー今回はCGを中心としたエディターチームの作品です。こういった映像を制作しようと思った経緯を教えてください。

エレファントストーンって急速に成長している会社で、この1年半の間に社員数も2倍になっているんですね。そもそも実写撮影の編集などがメインの会社ですし、エディター“チーム”になったのも本当に最近です。

だからこそ、「こういうこともできます」っていうのをアピールする必要があると思っていました。

 

エディター同士の接点もなかなかないので、技量を上げるにしても機会がない。特殊な案件でない限り使わないAfter Effectsの技術というのも少なくない。

そうした時に、bacterの映像制作を通じて新しい技術をいろいろと試してもらえば、チームの技術力向上にもなるうえに、会社のPRにもつながるんじゃないかと考えました。

 

 

ーーいろいろと考えていらっしゃったんですね! 大西さんとエディターチームのメンバーで、どのように連携して制作を進めたのでしょうか。

特に「こうしたい、ああしたい」という話はしていません。エディター自身がやりたいことをやってもらうことにしたので。僕にできるのは、自由に好きにやっていい空間を準備することでした。

 

ただ通常はエディターの場合、「ここはお任せするよ」って言われても「全体の流れの中で作らないと……」ってなるはずなんです。だからいかにその制約を取り除くか。そして、エディターが好きにやれる空間を作りつつも、いかに一つの映像作品として成り立たせるか。この2点については悩みましたね。

 

撮影は先にしていたので、そのシーンで何をするかという基礎の動きだけは先に決めてありました。パートごとに担当の割り振りだけをして、そこで「何をするか」「何を出すか」は完全にお任せです。

 

 

ーー全体の流れの中のポイントになったのは”鳥”ですかね。

ビルからの鳥は偶然に撮影できました。

これは映像に関わっている人なら分かるかもしれませんが、”偶然のタイミング”が撮影できる時があるんです。偶然撮影したカットが最終的に作品の核になることもあります。

そういうものは大事にしたいなと。

今回は、偶然飛んだ鳥からヒントを得て、いろいろと紡ぎ出して、最後の鳥と翼につなげていきました。ぜんぶ持ち合わせて、偶然を必然的に作るっていう。そういうのは得意ですね。

 

 

撮影場所で失敗した分、緻密な編集を要した

ーー前回Magazineで公開された記事で、「止むを得ず断念したこともあった」と書かれていました。どのような内容を想定していたんですか。

3Dトラッキングです。今回の場所ではトラッキングがきかなかったのですが、トラッキングができるとその空間自体を前後に移動させたり、そこに物が流れていったりと、奥行きのある映像が作れるんですよね。それができず残念でした。

ただ一つ分かったのは、「頑張ればなんとかなる」ということですね!

 

トラッキングがうまく反応しない部分も、時間をかければなんとかなる。人物の髪の毛の切り抜きなどもそうです。

そうはいってもやはり時間がかかってしまいますので、撮影時のミスをなくしたり、編集時間を圧縮したり、経験を積んでいかなければなりません。

 

 

自分の考えを“映像”で表現していきたい

ーー今回の映像制作を通じて、何かご自身の中で変化はありましたか。

だいぶ変わったかな。

最初にお伝えした通り、もともとはエディターの実績紹介となる映像を作っていたんです。ただ、映像全体を通して芯を通そうとすると、”メッセージ”が大事になってくる。

今自分が思っていることと、世間一般的な考え方がズレていると思った時に、そこに当てていくっていうことに気づいたんです。つまり、感覚の違いを映像を通して表現するのが大事だなって。

 

見ていること考えていることの違いとか、何か大事なこと忘れてないかなとか、そういう気づきを与えられるのが映像です。

文章と違って映像は、言葉で伝えるのはごく一部で、言葉がなくても画を見ていればなんとなく分かるっていう。そしてその撮り方にも実は文法があって。

 

 

ーー言葉の文法ではなく“映像の文法”ですか。

 

必ずその撮り方と理由があります。画を撮るためのカメラとか、レンズの種類とかもそうです。そして、どうしてこれを撮っているのか、どうしてこういう切り返しをしているのか。こういう人を出したかったとか、通常だとこうだけどここでは違う手法をしているとか……

そういうのが理解できると、映画や映像って見方も分かってくるんですよね。でもそういう映像の文法は、国語のように授業の科目になっていないので学校では教えてもらえません。

 

だから、そういうのを発信したいなって。考え方を整理して、その考え方を示す映像を作りたいです。自分の表現手法として「映像」を伝える必要があると思いましたね。

 

 

ーー興味深いですね、ぜひ作ってください。最後に今回の「Same old stuff, different day.」をご覧いただい人へ一言。

感想を聞きたいです!

 

というわけなので、映像をご覧になった方はTwitterで @bacter_es をタグ付けしてツイートてくださると嬉しいです。

 

<Photo by Jin Peng(金鵬)>

 

映像を観る:Same old stuff, different day.

記事を読む:「Same old stuff, different day.」はエディターの映像作品

「Same old stuff, different day.」のCG制作を、5つのパートに分けて解説