CG/Animation||Mitsuru Onishi

「Same old stuff, different day.」のCG制作を、5つのパートに分けて解説

#AfterEffects| #CG|
SHARE THIS ARTICLE

Same old stuff, different day.」はエディターチームの技術を披露する場としての作品にしたいと思っていました。そのため企画段階から決めていたのは2つ。撮影した素材をチームメンバーに渡して好きなように加工してもらうことと、できる限り制約を設けないことです。

当初は「VFX Games」のように映像内に制作工程を組み入れる想定でしたが、*bacterの特性を活かして、映像は映像のみの作品として公開し、制作工程については本記事で具体的に書くことにしました。

本作のCGパートは主に5つに分かれるので順を追って説明していきます。After Effects(以下、AE)を扱う方以外には分からない内容も出てくるかもしれませんが、ご理解いただけますと幸いです。

(*bacterの特性・・・bacterには映像作品を公開する「Project」と、記事を公開する「Magazine」のカテゴリが存在します。)

CG:Part 1 大西+兪(ゆ)パート

オープニングは世界観を伝える重要なパートです。他のCGパートより長めの約30秒がこのパートにあたります。冒頭は“現実から自分の世界へ”ガラッと切り替わる表現をしました。

 

全て背景と人物を切り離して制作しています。背景はコロラマでカラーが切り替わり”別世界に行くことを表現”し、Find Edgesを使用してひと味加えました。

次に“その人が思えば天気も変えられる”をテーマに、背景を青空の世界観に変更。各パート切り分けて合成しています。ただの背景合成だけでは、内面の楽しさが表現できないので、兪さんに女性っぽい書き込みを加えてもらいました。

 

そのあとは“行きたいと思えばどこにでもいける”をテーマに、背景がニューヨークのブルックリンに移動します。

 

背景合成をするにあたって、ウォークスルーのレンタルの映像素材がかなり少ないと気づきました。そこで今回はブルックリンの映像を使用。ただし逆回転にしているので、よくよく見ると車はバックしています。自由な世界の中ではこれもOKです。

ウォークスルーの映像合成は、人物を抜いてしまえば、手ブレの影響もあってカメラとキャストの合成のズレはほとんど気にならない印象でした。

 

モデルさん(ペインツェル仁衣那さん)の髪型については予めどこまで抜けるかわかっていたのですが、実際合成してみるとやはり荒さが目立ってしまっているので、今後はこういった部分の対策方法を探っていきたいと思います。あとは光の詰め作業も弱いので、その点も課題です。

CG:Part 2 今津パート

第2パートは、右手を上下に振っているところです。振っている手をトラッキングして、その手を追随させています。

 

「VFX Games」ではトラキングマーカーを表示しています。今回映像の中での説明ではないので、別のものを加えてもらおうと思い、ガラスボール的なものとパーティキュラーでトラッキングデータを追随してもらいました。

 

ガラスボールの作り方は、VIDEO COPILOT が提供しているチュートリアルをご覧ください。テンプレートでも多いのですが、パーティキュラーを追随させる場合、エミッターで追随する方法になるので、エミッターにトラッキンデータを配置すればきれいに追ってくれます。

あとは、時間とともに散っていく調整をすれば、手を振るたびに散っていくパーティキュラーが完成します。

CG:Part3 沼田パート

第3パートは左手の手のひらを上に向けて歩いているシーンです。

 

当初からここは手のひらの上にファイヤーボールやエネルギーボールなどを出してもらおうと考えていました。というのも、沼田くんはマーベル作品が好きだったのでちょうどいいかなと。

 

主に使ったのは、AEのプラグインPlexusです。多角形の点と線をつないで形を作っていきます。ここのパートでは、“なんでも作りだせること”を表現しています。

各パートは担当エディターに任しているのですが、こちらの予想をいい意味で裏切って作ってきてくれるので、まとめる立場としてはとても楽しめました。

CG:Part4 馬場パート

第4パートはボードを持つシーンです。ボード自体にマーカーを設置したものを、mochaを使ってトラッキング、合成をしました。

 

mocha AEはAEに標準搭載されています。mocha AEは平面のトラッキングで、今回のような奥行きやZ軸回転をしているようなものは、mocha Proという有料版のプラグインが必要になります。

今回mocha Proを購入して試していたのですが、馬場くんはmocha AEでコツコツ調整をしながら仕上げました。頑張ればなんとかなるようです。

 

こちらもボートに文字を出す程度のイメージしかなかったのですが、ボード内に同じ画像をはめ込んでいくことで、ペンローズの階段のような映像が出来上がってきました。

 

これにはとても驚きました。

馬場くん曰く”ありえたかもしれない、いろんな可能性みたいなものを表現した”とのこと。今後の馬場くんの映像制作にもご期待ください。

CG:Part5 大西パート

第5パートはエンディングです。ここをどうするかで、全体的なイメージやつながりが変わってくるので悩みました。

 

撮影時にはモデルさんの立ち姿だけでも画になっていたので、モデルウォークから立ち止まるまでの一連の流れをずっとカメラが引いていくとは決めていました。何も合成しなくてもカッコいい映像だったので、モデルさんの良さを活かし、立ち止まるところまではできる限り撮った映像をそのまま使用しています。

 

立ち止まってから何をすればいいかを考えた時、パート1の兪さんの描いた翼のイメージと今回偶然カメラに納まった鳥がマッチして、自由に飛ぶ鳥の力と大きな翼が最終モチーフとして浮かび上がってきました。

それをAE特有の光の表現を用い、彼女の黒い服全体を抜き出し、そこに無限の可能性である宇宙を合成して、CGパートのラストにしました。

 

CGパートは彼女が歩き始めると自由な世界が広がり、彼女が立ち止まるとその世界が終わる(元の世界に戻る)構成になっています。

彼女の世界の中では歩くことをやめましたが、彼女の目線はこれからを見ているように感じます。

 

今回エディター中心の作品なので後加工が前提だったのですが、すごく失敗だったのが場所選びです。映像の撮れ高は良かったものの、この場所だと3Dカメラトラッカーがほぼ機能せず(大半が抜けており面構成を把握できなかったため、カメラ位置が取らなかった模様)、実は想定していたものをいくつもやめました……。

また両サイドにあるこげ茶の手すりが、奥に向かってすぐ消えていくので、こちらもトラッキングはほぼ効きかず。それに加え予算の関係で、原色ではなく黒のワンピースを着用していただいたのですが、輝度、彩度とも同化してしまい、人物の切り抜きにかなりの時間を要してしまいました。

 

撮影場所の失敗はありましたが、色々試行錯誤する中でトラッキングの相性や合成の方法を考えることが必要だとわかりました。今後もこれにめげず、実写との合成も兼ねた映像をエレファントストーンでも制作していければと思います。

 

撮影は山部さんと竜口くん、場所探しなどの協力で松岡くん、東さんに協力をしていただきました。ありがとうございました。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます、今後ともよろしくお願いします。