【INTERVIEW】やりたいことにこだわった初企画/「YOUR HAND」Studio Live Ver.
bacterで今月公開した「YOUR HAND」Studio Live Ver.は、ジャズバンド「Soigne(添い寝)」の新曲を収録風MVに収めた映像。
空間演出にはイベント集団「Circus Night」に協力を依頼し、SoigneとCircus Night、そしてbacterの3団体のコラボにより出来上がった作品です。
今回初めて自らbacterでの企画を発案し、作品の監督を務めた嶋﨑 亜美にインタビューを実施。企画の背景や制作現場のこと、今回の作品へのこだわり等について話を聞きました。
嶋﨑 亜美
1997年生まれ、熊本県出身。尚美ミュージックカレッジ専門学校音響・映像学科卒業。上京してすぐ地元熊本が地震の被害にあい、映像の力を使って復興に携われないかと考える。学生時代は地元の自然と都会の街並みを使ったショートムービーが専門学校映像フェスティバルで準グランプリを獲得。またミュージカルなどの収録も手がける。一度見たら調べてでももう一度見たいと思えるような映像を作るのが目標。
ーーバンドの収録映像を今回bacterで企画しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
今まで自分発案でbacter企画を出したことは無かったんですが、そろそろやらなきゃな、それも思いっきり自分がやりたいことで企画したいな、と思って。
学生のときにミュージカルやダンス公演の収録をやっていたのですが、私の中で「収録=既に出来ているものをどう映像に収めるか」であって、それって実はこれまでbacterでもエレファントストーンでもあまりやってきていないことなんですよ。
かねてから収録映像を仕事でもやりたいとは思っていたんですが、今回でこのジャンルの映像制作を始めるきっかけになれたら良いなと思って、bacterで収録映像を撮ろうと決めました。
ーーミュージックビデオ(MV)では無く収録映像をやりたいと思ったのは何故ですか?
一般的にMVって、監督がストーリーや演出を音楽に合わせて一から色々とディレクションするじゃないですか。でも私はあくまで、既にある形のものをどう収めるのが一番綺麗か、格好良いか、ということをbacterで考えたかったので、「収録映像」にこだわって本企画を始めました。
理想としては、スタジオライブレコーディングのように、実際に演奏しているところの音を録り、ミキシングをして利用する予定でした。しかし今回新型コロナウイルスの影響でアーティストさん(Soigne)も長い間集まって練習が出来なかったということもあり、音に関しては演奏している映像に被せる形となりました。
それでもパッと見はそれが分からない位の完成度を狙ったので、「これ実際に音も録ってる?」と観た方から言って頂いたりもしました。
一般的な「MV」では無いものの完全な「スタジオライブレコーディング」ともならなかったので、タイトルに関してはめっちゃ考えた結果、「Studio Live Ver.」としました。
ーー今回「Soigne」さんの楽曲で映像を作ろうと思われた経緯を教えてください。
収録映像を撮ろうと思っていたので、私の同級生の藤森が運営しているイベント集団「Circus Night」に、次回イベントがある時にbacterとして映像を撮らせてもらえないか持ちかけたんですよ。
しかし新型コロナウイルスの影響やそもそもイベントは年2回のペースで行うらしく、次のイベントの予定が9月となっていて、企画発案当時(3月)からは期間が空き過ぎていたということもあり、Circus Nightのイベントの収録映像を撮るのでは無く、最近空間演出の活動もされているCircus Nightが演出した空間でMV風の収録映像を撮ろうという話になったんです。
じゃあ出演アーティストはどうしようとなった時にも、以前Circus Nightのイベントに出られていたSoigneさんを藤森を通して紹介してもらったんです。Soigneさんの楽曲はCircus Nightの空間に雰囲気がぴったりだし、良い人たちだし、ちょうど新曲を出すみたいだから撮ってみてくれないかって。
私はそれまでSoigneさんのことは藤森を通してちょっとは知っていたのですが、直接お会いしたことは無かったので、撮影当日までの打ち合わせは基本全てzoomかLINEでしたね。
ーー撮影場所は日本家屋だそうですが、どうやってロケーション選びをされたんですか?
実はあの日本家屋のオーナーさんと藤森含めたCircus Nightのメンバー何名かが知り合いで、また藤森繋がりで紹介してもらったんです。
最初はもうちょっと広い場所とか真っ白いスタジオとかも検討していたんですけど、Circus Nightの照明セットが一番綺麗に映えるところが良いなと思って探していたので、この場所を藤森に教えてもらった時には「この和な空間にCircus Nightのオレンジの光を配置したらめちゃくちゃ映えるよね」って話をしてすぐに決まりました。ベストマッチですね。
音漏れ対策とかもされていて、音楽イベントや収録にも向いていました。
ーー撮影に関して印象に残ったことがあれば教えてください。
今回の企画で「収録映像をつくる」ともう一つにやりたかったことが、「カット割りをめちゃくちゃ考える」でした。
音楽一つに対しての、ここのタイミングでこの楽器を抜いて、このアクセントの時にこのカットにして、といったことを細かく考えて構成を作っていたので、撮影自体はスムーズに進みましたね。
カメラは同じチームで仕事をしていた菅野さんや山部さん(エレファントストーンディレクター)にお願いしたんですけど、お二人は長く一緒に映像を作っている人たちだったので、「こういうカットが欲しいです」って伝えたら「こんな感じね」ってすぐに分かって下さって、半日ちょっとの撮影で終わりました。
ーー現場で監督として気遣っていたことなどはありますか?
私はまだ未熟なのですが(笑)、今回チームの後輩の山田さんと撮影現場で一緒になることが初めてだった上、それが自分の作品の現場だったので、「先輩としてちゃんとやらなきゃな」という気持ちで指示出しなどをしていました。
あと、キャストさん含めて現場に人が大分多かったんですが、私と藤森が同級生だった以外スタッフは皆初対面だったので、とにかく皆んなで楽しく出来ることを一番心がけましたね。
結果として、楽しかったです。皆さん人柄がよくて、めちゃくちゃ楽しい現場でした。
Soigneメンバーの皆さんも気さくで自由で、撮影が終わると現場の畳に寝っ転がっていたり、本当に平和な雰囲気でしたね。
ーー編集は嶋﨑さんがメインで行われたんですか?こだわりなどあれば聞かせてください。
編集はほとんど自分でやりました。今回日本家屋でオレンジの光がいい感じに光っているのを映したかったので、DaVinci Resolveという編集ソフトでカラーグレーディングをこだわってやりました。
あと、「ここでギター抜くのかっこいいな」「ここでこの絵のベース抜くのも良いな」とか、そういうポイントを観ている人に伝えたいなと思いながら編集していました。
ーーまた今後bacterで挑戦してみたい映像などはありますか?
今回は結局収録「風」な映像になってしまったので、次こそはちゃんと収録映像を作りたいっていうのはありますね。収録映像といえば、将来的にはいつかビッグバンドジャズの映像とか録りたいですね。すごい好きなんですよ。
あと、出身の専門学校にはライブ音響やライブ照明の学科もあって友人も結構多いので、コラボして格好良いレーザー照明なんか組んでもらって、ライブレコーディング出来たら楽しそうですよね。
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彼女の音楽のバックグラウンドが全面的に活かされた今回の「YOUR HAND」Studio Live Ver.。
色んな演出や編集を加えたMVにすれば、いくらでも派手にも個性的にも出来るだろうなと一視聴者的には思うところを、バンドが演奏する様子と音楽と、その空間だけで一本の映像を作ることにこだわった結果の潔い作品と言えます。
<Photo by Nana Bannai(坂内 七菜)>
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