「映像のジャンルではなく、“作風”を示したかった」bacterの原点を振り返る
「素晴らしいですね」——有り難いことにお客様からそんなお褒めの言葉をいただくことが多い、bacterの映像作品と取り組み。
(簡単にご説明すると、エレファントストーンに在籍している映像クリエイターが、クライアントワークではなく、自由に好きに映像を制作してお届けしているのがbacterです)
2017年7月に本格的にサイトをリリースしてから2年半。これまでに20作品以上の映像作品を公開しています。ただ、あくまでもクライアントワーク(=仕事)ではない取り組みなので、継続的に作品を公開するというのは容易ではありませんでした。更新が停滞していた時期だってあります。
「どうしてこういう取り組みをしているの?」
「何かメリットあるの?」
と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回はbacterをよく知るエレファントストーン代表の鶴目と、山部ディレクター(以下、「べーさん」とも表してます)の二人に、「そもそも、bacterはどうしてできたのか」「どんな想いが込められているのか」など原点を振り返ってもらいました。
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「bacter」のサイトをリリースする前から自“社”制作をやっていた
鶴目 昔のコーポレートサイトに、自“社”制作日記っていうブログのコーナーがあったんですよ。コンテンツとも呼べないような、「〜〜しました」っていう日記をみんなで書いてました。その中のコーナーで、自主制作ではなくて、自“社”制作みたいな感じで映像を掲載していた時期があります。
遡ると2012年の終わりくらい。嶺くん(ディレクター)に知り合いから自主制作の上映企画のオファーがきたんですよ。まだ創業期で昼夜問わず休みもない時期だったけれど、「どうしてもやりたい」って言ってきたから、意を決して「よし、じゃあやろう!」と。
当時いた5人のメンバーみんな、激務の中で時間を見つけてサポートしました。土日も撮影に駆り出されてたな〜(笑)。そうして完成したのが『タイム』っていう作品です。
その後に、安田くんから「映画を作りたいから援助してくれませんか」っていう話がありました。ちょうどコンテンツマーケティングや記事に力を入れていこうとしていたので、「自社制作日記に掲載するならサポートするよ」と。
それで2014年の年末に出来たのが『ルージュの転校生』という作品です。ショートショートフェスティバルにもノミネートされました。
鶴目 嶺くんも安田くんも、もともと映画が撮りたかった人たちだから、「仕事をしながら映画、映像を作れたらいいよね」って。それがbacterの発端です。
その後、2015年から会社がめちゃくちゃ忙しい時期に突入しました。当時、フリーランスとして活動していたべーさんに週3〜4回来てもらうようになって、結局「うちに入ってよ」って誘いました。それで入社したのが2016年3月。
山部 「うちに入ったら映画も作れるよ!」って言われたのは覚えてます。またまたぁ〜!って感じでしたけど(笑)。でも僕も、映画の専門学校を卒業した後に、自分の作品を作りたいと思っていたんですよ。
鶴目 やっぱり根本には、そういうことがやりたいっていうのがあるんです。
映像のジャンルではなく、“作風”を示したい。アウターブランディングサイトとしての「bacter」
鶴目 2016年6月に大きなターニングポイントがありました。Web制作を手掛けている株式会社LIGの齊藤ジョニーさんから突然「記事広告を出しませんか?」って連絡がきたんですよ。
そこから発展して、「映像制作会社なら映像を作ってください」と頼まれて作ったのが、旅と音楽のミュージックビデオ『IBURI』。
鶴目 この『IBURI』も記事広告(いぶり燻される人生かもな。秋田県横手市で「いぶりがっこ」を作ってきました。)も反響があって、発信していくことの重要性を知りました。
その頃、べーさんと「オリジナルの映像を作れたらおもしろそうだよね。そのためのサイトを作ろう」という話もしてました。あとコーポレートサイトのリニューアルも検討してましたね。
ようやく利益が出だした時期なんですよ。2015年から2016年にかけては売上が約220%成長とめちゃくちゃ伸びた。「マンションムービー.com」と「観光ムービー.com(現在は「フィルさと」)」というサイト経由で大規模な案件依頼がきたからです。
ただ、それらのサイトからくる案件は業界が絞られるじゃないですか。しかも当時はモデルさんを撮影するような映像だってほとんど制作してなかった。風景のみ。本当に。
人を演出したい、ストーリー仕立ての映像を作りたい。……そんな想いがありながら、そういう案件の依頼をもらえませんでした。まだまだ信頼がなかったから。
それなら業界じゃなくて、エレファントストーンは「こういう映像も作れる」「こういう映像も得意としてる」という“作風”を表すサイトを作ろう。bacterのことを「アウターブランディングサイト」と呼んでいるのも、そういう背景があるからです。
ロゴや音楽にもこだわった。LABO(実験室)としての「bacter」
鶴目 せっかくLIGさんとつながりができたし、Web制作をお願いしようかなと考えていた頃の、べーさんとの会話をよく覚えてます。「今度Webサイト作るんだよね」っていう話をしたら、べーさんが「そのプロジェクトに僕を入れてもらえないですか?」って言ってくれました。
山部 Webサイトの作り方は全然分からないけど、興味があったんです。だから、「やりたいです」って言いました。それがbacterに携わりはじめたきっかけですね。
鶴目 サイト制作をするにあたり、LIGさんが事前にキックオフ飲み会を開いてくれました。その時に会社のことや、作りたいWebサイトのことなどを話しましたね。bacterのコンセプトにもなっている「侵食」「浸透するのに時間がかかる」という話もそこでしました。
あと、ロゴを印象的にしたいとも伝えました。「blur」っていうイギリスのバンドのロゴが好きなんですよ。小文字の「b」と「r」で終わる感じが好き。
鶴目 ロゴを全面に出して、ゆくゆくはステッカーを作ったり、アパレルのラインになったりしたら、めっちゃ楽しいだろうなって考えてました。そういう色々な想いを汲み取って、LIGさんが「bacter」というサイト名を提案してくれました。
鶴目 サイトのラフデザインが上がってきた時に、最初にイメージとしてふと浮かんだのが、Aphex Twinの「selected ambient works85-92」ってアルバム。
(Spotify:https://open.spotify.com/album/7aNclGRxTysfh6z0d8671k)
これってAphex Twinのリチャード・D・ジェームスがまだパソコンもハードディスクも普及していない時代に自宅で1人、楽器を改造したりしてその音をカセットテープに多重録音していたものを、後にリリースした作品なんですよ。
その作品が世界中のコアなリスナーや、ミュージシャンにめちゃくちゃ影響を与えていて、雑誌の「90年代のベストアルバムランキング」1位になってるんですよ。
まさにLABO(実験室)だな〜って思って、bacterもそういう感じなるといいなって。
bacterの作品も、誰かに作ってほしいってお願いされているわけではなくて、自分たちが「こんなのどうですか」っていうスタンスじゃないですか。だからLABO感がありますよね。
山部 (今もbacterは全社員の前で企画発表をするところからスタートしますが、)当初はbacterの企画発表の時に「こんな実験的なことをしよう」と言っていましたよね。例えば僕が最初に制作した『STIMULUS』は、人を浮かしたかったんです。bacterだからこそ、そういうチャレンジングな撮影ができました。
あの頃はものすごく忙しかったから、bacterの作品も徹夜で制作してました。でも、そんな状況でも楽しくできた。そういう想いを「「bacter」のおかげで出来た STIMULUSな映像制作」の記事で書いています。
鶴目 その後も実験的でしたね。例えば、嶺くんの「退屈を捨てよ、街へ出よう」は、当時購入したばかりの「RED SCARLET-W 5K」というシネマカメラで撮影したい。がーすー(ディレクター)の「チャンネルNo.1」は、スクエア型での映像に挑戦したい、とか。
2018年2月くらいからbacterの映像づくりとサイト更新が停滞しだしました。それで、2018年9月に仕切り直したんですよ。仕事でもないけれど、遊びでもない。だから通常業務が忙しいと止まってしまうわけです。やめるのは簡単ですが、継続するのは難しいものですね。
もっと価値を高めれば、もっとおもしろいことができる
鶴目 会社から予算を出しているし、いくら業務外も使っているといっても一定以上の社内工数はかかってる。だから今よりももっと価値を出していかないといけないと思います。
お客様や採用の応募者、同業の方々などからは一定数以上の感激、感動はしてもらえている実感はありますよ。ただ、より高い価値を出すためには、bacterが何かしらの成功をしていかないといけないですよね。
二人 日の目を見たいっすね。
鶴目 会社もbacterももっと成長したら、もっとおもしろいことができる気がするんですよ。本当に価値が出てきたら、制作する作品の数も規模も、今よりも上を目指せると思う。
モデルさんやミュージシャン、撮影スタッフから「bacterに参加したい」ってどんどん言ってもらえる存在になれるように、会社もbacterも成長していきたいですね。
あとロゴもかっこいいから、アパレルができたら嬉しいかな。
山部 bacterの店舗を構えたいですね。店舗経営をしたい!
鶴目 アパレルは半分冗談だけど、でも本当にできたらおもしろそうだよね!
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クライアントワークではないからこそ、難しい面がありながらも、大きな夢と可能性が広がっているbacter。みなさんに「あんな映像を作ってもらいたい」「bacterに参加してみたい」と言ってもらえるような映像を、これからも目指していけたらいいなと思います。
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