Project Story||Mai Akiyama

【INTERVIEW】「年賀ムービーとは何か」時間をかけて考えた / 2020 New year movie

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本メディアbacterを運営しているエレファントストーンは、年明けに年賀ムービーを公開するのが恒例となっています。毎年監督は異なり、2020年はディレクターの竜口が担当しました。

 

会社の歴史の変遷を、これまでオフィスのあった築地→代々木→千駄ヶ谷→渋谷(桜ヶ丘)→渋谷(猿楽町)という土地を舞台に辿った本作。制作の背景や裏話について話を聞いたので、この記事で紹介します。

 

竜口 昇
1991年 福岡県生まれ。男三人兄弟の末っ子。中学生の時にガス・ヴァン・サントの『エレファント』を観て洗礼を受ける。2014年、同志社大学文学部を卒業。大学のサークルで映像づくりを始める。その後、映画美学校に入学し、映画作りのノウハウを一から学ぶ。美学校在学中には数本の短編映画とミュージックビデオを制作する。卒業後は自分のスキルを活かせる会社を希望し、2017年エレファントストーンに入社。

 

 

——先日公開された制作日記に書いてありましたが、当初は雪を撮影しようとしていたんですよね。もし長野での雪の撮影が実現していたら、どのような映像になっていたのでしょうか。

物語をつけようと思っていました。歴代の年賀ムービーには、物語がなかったんですよ。それと、単純に雪を撮りたいという気持ちもありました。

 

一面の雪景色って、見たことありますか? きっと長野に行けばあるだろうなと。bacterの過去作品「十月の物語」で社内のみんなと南伊豆に一泊して撮影をしたのがとても楽しかったので、あんな風にまた泊まりで撮影に行けたらいいなとも思ってました。

 

撮影日が近づいてきた段階で長野に雪が降っていないと知り、焦りました。仕事でもそんなに焦ることはないのですが……でも、なんとかなるものですね。

 

 

——今回の年賀ムービーは、過去から現在までのオフィスがあった土地で撮影されていますよね。どうしてこのような映像にしたのか、何か背景があれば教えてください。

会社に約30人のスタッフがいて、その大半が現在の渋谷(猿楽町)オフィスになってから入社しているじゃないですか。

 

鶴目さん(代表)が以前どこかで、「5〜6人だった時期(2012年の創業から2015年くらい)を知らない人のほうが多いから、何らかのかたちで伝えらえれたらいいな」というニュアンスのことを言っていたんですよ。それが記憶に残っていて、オフィスの歴史を映像にしてみることにしました。

 

 

——竜口さんが入社された時には既に現在のオフィスでしたか?

そうですね。エレファントストーンは2017年10月1日にこのオフィスに移転していて、僕の入社日も同じ日なんですよ。初日に出社したらみんなデスク周りを整理していて、あまり相手にされなかったような……(笑)

 

映像に出てくる他の土地のことは僕もよく知らないので、撮影は安田さん(2012年入社のディレクター)に担当してもらいました。「この場所を見れば、千駄ヶ谷だって分かりますかね?」「分かる分かる」みたいに、確認しながら進めていきましたね。会社の規模がまだ小さかった頃の様子やエピソードも教えてくれました。

 

 

 

——「今とは違う場所で働いていた時代もあったんだ」というところから、会社の歴史に目を向けるきっかけになったかもしれませんね。ちなみに今回のプロジェクトで苦労したポイントはありますか?

編集が大変でした。クロマキー合成は、グリーンバックに光を当ててちゃんと緑が出るように撮影しないと、編集の時に抜けないんですよ。千駄ヶ谷はトンネル内で撮影したのですが、照明を当てているわけではかったので暗くなってしまい、編集の際にうまく抜けず苦労しました。(僕ではなく、同じチームの嶋﨑さんと今津さんが一生懸命対応してくれました!)

 

あと、平成から令和になった節目なので、できれば「令和」も絡めたいと考えていました。参考になるような映像も調べたりはしましたが、結局は何も絡められませんでしたね……自由度が高い分、難しい。ある程度は枠組みが決まっているほうがやりやすいです。

 

 

——自由に作品を制作できるといっても、通常のbacterと年賀ムービーでは異なる部分もあったかもしれませんね。年賀ムービーの制作は、いかがでしたか? 

楽しかったですよ。ただ、「年賀ムービーとは何ぞや」っていうのを考えるのに時間がかかりました。「年賀ムービーはこういうものだ」と最初に説明されるわけじゃないんですよ。定義したら何になるんですかね。あえて説明しないで、ポテンシャルを引き出しているのかもしれません。

 

“年賀”という側面と、“何を撮ってもいい”という側面、この2つのバランスは色々考えました。完成した作品は、僕が思う「年賀ムービー」の一番いいバランスになっています。

 

制作を終えた後は開放感があって、bacterでまた作品づくりをしたくなってきました。まだ企画があるわけではありませんが。制作過程はめっちゃ大変なんですが、終わると楽しかったなと思います。

 

そもそもbacterが好きなので、これまでほとんどの作品の制作に携わってきました。ほぼ皆勤賞。声をかけられなかったら悲しいですもん(笑)

 

もう一回撮りたいですけどね、年賀ムービー。

 

 

——もし来年も年賀ムービーの制作を頼まれたら、またやりたいですか?

やりますよ! 今回は「年賀ムービーをどう捉えたらいんだろう」と考えることに時間をかけてしまったのですが、制作を終えた今、僕の中では“こういうことなんだ”という解釈が生まれました。なので、また別の作品ができるだろうなって。

 

来年の担当者はぜったいに違う人ですけどね。

 

<Photo by Nana Bannai(坂内 七菜)>


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