Interview||Sho Imazu

ボウガイズ連続インタビューvol.2 〜bacter制作の新曲MV「南極」前史〜

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前回は、『東京五輪音頭2020』を紐解きながら、ボウガイズの音楽に対する社会的なスタンスが明らかになるインタビューでした。

今回お届けするインタビューでは、『それでも街は廻っている』や『ダンスandダンス(DOYAGAO)』について話を聞きながら、
より深く、ボウガイズの楽曲の魅力に迫っていきたいと思います。

 

『それでも街は廻っている』MV

 

■『それでも街は廻っている』MVの撮影について

今津(以下”今”):これはどういうテーマで撮影したんですか?

橋本ハム太郎(以下”橋”):このMVは、「廻っている」っていうのがテーマで、「廻っているもの」ということで、首都高速と観覧車で撮影しました。

今:途中でさしはさむ映像とかも、昔に撮った映像ですよね。

橋:学生時代の時、2010年とか2011年とかに、当時のiPhoneで撮った映像ですね。

今:昔のiPhoneの映像と、廻っている首都高速と観覧車がというモチーフが、表現したいことがあっている感じがしますね。

FAT-LEE(以下”F”):昔のiPhoneの映像がすごいエモいことになってるってことやんな。

橋:ぼやっとして粗くて、しかも朝方の映像やから、よけいやねんけど。これは、ロストテクノロジーだと思うんですよ。今携帯ショップいってもこの画質の携帯なんかないもんね。

今:時代はどんどん綺麗になるけどね。

 

■バース分析 ~FAT-LEE~

今:歌詞を書くときは、先にタイトルを作るんですか?

mu knee man(以下”mu”):今回は、タイトルだけ先に決まってたんですよ。ハム太郎さんの家に『それでも町は廻っている』という漫画があって、それで、これをタイトルにしようって流れでした。

今:なるほど。FAT-LEEのバースについてなんですが、すごく皮肉がきいたいいラップですね。

F:これは良いラップでしょ(笑)。前半は、◯◯党のガハハおやじ的な感じでいってるわけ。一方、後半の八小節はオフビートになってその○○が仕切る世の中では末端が終電間際まで働かされ、値引きシールが張られたお刺身だけを買うのが楽しみな人がいるんだっていう歌詞やねん。

今:映画っぽいですね。

F:すごくよくできた構成のラップ(笑)

今:最後に「なんてアイロニー」って歌ってるけど、それを歌詞の構成でやってるということですね。

 

■バース分析 ~mu knee man~

今:mu knee manはどういう意図でこの歌詞にしたんですか?

橋:mu knee manの歌詞は、これぞmu knee manって歌詞やけど

mu:えーと。このころKOHHとか聞いてて、KOHHってラッパーは固有名詞をたくさん使う人で、それに影響されてますね。固有名詞を歌詞に出していきたいなってモチベーションがあったんですよ。それは今も続いているんですが、それをカタチにしようって時期だったんです。だから固有名詞はめちゃくちゃ入れてて、けど伝えたいことは特になくて、とりあえず固有名詞を入れた歌詞を書こうというモチベーションで。それで『それでも街は廻っている』というお題だったので、それっぽく書いただけですね。

今:へー。mu knee manの歌詞は結構意味がありそうだけど…。

橋:でも伝えたいことがなくて、それっぽい感じでっていうのは逆にこの曲のテーマには合ってるかもな。なんか、自分のことなんか置いて行かれて、自分とは関係なしに世界は進んでいくっていうのが、テーマとしてあったから。

mu:そのコンセプトを聞いてそれに合わせて、固有名詞を並べ立てるラップをしたいと思ったんですよ。伝えたいことは、曲作る時に会議するんですよ、その時に橋本ハム太郎さんとFAT-LEEさんがもう、そこでテーマ決まっちゃってるんで。僕はそこでそこに合わせて書いてるってだけ。

今:それはすごいね。無私の精神だね。

mu:職人みたいな感じですよね。こういう発注だから、こういう感じかなって。

一同:(笑)

今:この歌詞の中で、人生、いろんな断片を切り取ってるっていう感じだけど。

mu:画が浮かんでくる歌詞が書きたいなとも思ってて、抽象的なこと言ってて、画が浮かんでこないラップもあるんですけど、聞いてて内容が入ってこないんで、聞いて画が浮かんでくることを意識してて、この曲もそうやって作ってますね。固有名詞を入れると浮かんでくるんですよ。だから、固有名詞が入ってる曲が好きなんですよ。

今:それはKOHHに影響を受けたんですか?

mu:KOHHとかZORNとか。まあ、二人もアメリカのラッパーは固有名詞を入れてるので、そこから影響を受けたのかもしれないですけど。あとK DUB SHINEも固有名詞入れたりしてるんで、ロンリーガールとか、スター誕生とか、そこから影響を受けてるのかもしれないです。そん時、僕がきいてていいなって思ったやつはだいたい固有名詞入ってたんで、その手法をパクったって感じです。

橋:「どうせ忘れるだろ 文春砲」とかそのへんは、メッセージを感じるけどね。

F:そう。この時ちょうどベッキーとかね。ベッキーの件とかどうでもいいのに、騒ぎ立てて、またすぐ忘れるんだろってのもあるし。

mu:そういうのを、なんかのネット記事でみたんですよ。みんな大きい話題が来て、盛り上がるけどすぐ忘れちゃうよねっていうのを東浩紀だか菊池成孔だかが言ってて、それをぱくったっていう。

F:お前パクりまくりやん!

mu:全部パクリですよ(笑)

橋:「乗り回すポルシェやフェラーリ でも同じ街にネカフェ難民」とかはさ、mu knee manの視点じゃない?

mu:これは「闇金ウシジマくん」からとったやつです。書かれてたかはわかんないですけど、そういう漫画じゃないですか。「それでも街は廻っている」というテーマだったので、書くネタねえなーと思って、でも「闇金ウシジマくん」パクれば書けるかな、みたいな。
あとは、東浩紀だか菊池成孔だかが言ってたことを盛り込めば、16小節いけるかなって。

今:「履歴みても何したか思い出せないグーグルクローム」とかは?いいリリックだと思うんだけど。

mu:これも誰かが言ってたと思います。

F:しかも、このトラック自体mu knee manが作ったトラックやけど、プリセット使いまくってるだけやねんな。

mu:ガレージバンドっていう無料の音楽制作ソフトに入ってる音を組み合わせたんですよ。

FAT-LEE:もう、全てが張りぼて(笑)

今:とはいえ、みんなmu knee manみたいに作れるわけじゃないですよね。

橋:「今日もスマホいじる生きた屍」ってのはなんなん?これはサンプリングなん?オリジナルの批評なん?

mu:ネットで、そのスマホ批判ってだいたいあるじゃないですか。それを書いただけですよ。それを印を踏める形に書き直しただけですよ(笑)

橋:でも、mu knee manの好きな世界観あるよな。この曲に詰まってるような感じすんねんな。

今:サンプリングしてるとはいえ、ものにしてる感じはあるけどね

mu:ぱくってまとめたっていう。だいたいそうなんですけどね。

 

■ダンスandダンス(DOYAGAO)とボウガイズ

今:どういう経緯でこの曲を、作ることになったんですか?

F:『東京五輪音頭2020』のPVに明日賀友朗さんが反応してくれてて、そこから明日賀さんの曲は聞いていて。その中で、特にこの曲はラップバージョンにしたいって思って「やりませんか」ってDM送ってん。

橋:でも、いまは音楽活動してないから、ご協力は難しいですって返ってきて。そこで我々がとった手段が、下北沢で明日賀友朗が行ってた半年に一回のライブに乗り込むという。そしたら快く承諾してくれて(笑)

F:会ったらそうやねん(笑)

橋:「全部パラデータ送ったら大丈夫ですか?」って(笑)

F:それで、曲は使わせてもらうことができたけど、さすがにMVには参加してくれへんやろなーと思ってたら、空いてる日全然いけますんでって感じで、快く承諾してくれました(笑)

今:この曲再生数もいってるよね。

橋:再生数も1600回いま超えてて、結構多いやん。いいねが32ついてんねん。で、バッドが14!

F:世の中嫌になるよな、なんでこんな弱小音楽グループにバッドつけることがあるねんって思うよな。

橋:でもどこが嫌なんこの曲の。『東京五輪音頭2020』やったらわかるけど(笑)

 

ー明日賀友朗ー

Twitter: https://twitter.com/ashitagatomorou
soundcloud: https://soundcloud.com/ashita-ga-tomorrow

 

 

■ダンスandダンス(DOYAGAO)とFAT-LEE

今:なんでこの曲をラップバージョンにしたいと思ったんですか?

F:ゆとり FUN GROOVE末期に聞いた曲ってのもあって、すごい歌詞の内容がささってん。当時の鶏冠FUNKとか橋本ハム太郎もそうやってんけど。俺と鶏冠FUNKでゆとりFUN GROOVEやってた時は、ノルマ地獄で怖い先輩のlive付き合いでいって、自分もノルマ1500円×15かせられてて、達成せんかったら金払わされるみたいな感じで。売れたかったのでそれやっていかんといけないし。でもそういうやり方してて周りでやめていってる人いる。自分も嫌やな、しんどいなとか思いながらやってたんですよ。

今:なるほど。ノルマ地獄…。

F:社会人なってからも続けてたけど、仕事も忙しいし、まあずっとブラック企業みたいなとこでで働いてたからな。その上、付き合いで、しかもノルマで続けていくって大変なことやなって思ってた時に、この曲を聞いて。
パッと聞きはダンスホールで踊っている人の話やねんけど、ダンスホールで踊り続けるにはちょっと力抜いてやらないと、それこそ踊り続けるにはちょっとコツがあるってことやねんけど、それが音楽を続けることのメタファーになってて。それが当時思ってたことと重なってんな。

今:それこそサビの部分「肘の硬さが気になるな 大丈夫 大丈夫」という歌詞に重なってるよね。

F:それで、明日賀さんを独自に調べたら、この人も違う名義で活動してたことがわかってん。それでlive行った時に話きいたら、音楽で売れようと思って頑張ってた人で、で、職業作曲家としてやってた時期もあって、それもいろんなしがらみがあって、本当は大好きな音楽だけど、商業音楽の規制の中で、嫌だったという気持ちも曲に反映されている。ということも、ちゃんと会って言質がとれました(笑)

今:FAT-LEEの経験と明日賀さんの経験が重なったんですね。

F:音楽ってのは、本当はそういう、仕事とかで金につながる、そういうのから離れたとこでやるはずやのに、ガチでやるとそうはいかなくなってくるというのが、思う人多いんじゃないかな

今:ヒップホップの最初の始まりもそうだよね。

F:パーティから始まってるからね。

今:仕事としてやろうとかじゃなくて、みんなを愉しませるために。

F:ディスコ行く金もないし、みたいなところから始まってるわけやから。

今:始めた人誰だっけ?

F:DJ クールハーク。詳しくはNETFLIXのヒップホップエヴォリューションを見ていただきたいところです。

今:表現とは何かってことだよね。

F:表現を続けることが必要な人もいるな、と思ってて。実際に音楽をやってる人がやめるきっかけは、社会人になることが多いと思う。
おれも、大学時代にラップやってて、社会人になって北九州に転勤になったんやけど、このままやったら終わっていくんかなと思ったことがあって。そんな時、ラップでもやらないと気が狂いそうになんねん。そういう表現が必要な人もいるってこと。
自由にやれるスペースを保っていかないと、まともに生きれない人がいるから、そういう人がどうやって自分のやりたいことを続けるか、ってのの答えが『ダンスandダンス(DOYAGAO)』にあった。だから、自分のラップを載せてやりたいなって思った。

今:表現をしようと思ったら、つい成功例が目に行っちゃうよね。売れてる人のようになりたいとか。そういうところに、いかに飲みこまれないかってのが大事と思いました。

F:おれも、宇多丸師匠のラジオ出たら、どんなコメントしようって今も想像するもんな(笑)

 

■ダンスandダンス(DOYAGAO)とmu knee man

今:mu knee manはこの曲で気に入ってるところは?

mu:気に入ってるところは…特にないんですけど(笑)全体としてうまくまとめられたかなと思うんですけどね。テーマが決まってるわけじゃないですか。この曲は90年代的な日本語ラップでいってほしいって注文を頂いてたので、それは叶えるように努力をしてやりましたね。

今:歌詞についてはどう?

mu:歌詞の内容としては、周りに合わせる必要ない、打算ばかり考えるな、楽しめ、というメッセージを盛り込んであるんですけど 周りに合わせる必要ないってメッセージは、自分的には「お前肘の動き固いんだよー」って言われてる画が浮かんだので、FAT-LEE さんの読みとは違うんですけど、別に硬くてもいいじゃんて。自分なりに楽しめればいいんじゃないか、ってそういう考え方をサンプリングしたってのはありますよね。だから、FAT-LEE さんの読みだと、考えすぎて動きが硬くなっちゃってるって解釈じゃないですか。

F:たしかに、本気でやるとそうなってくるってことやな。

mu:お前ジーニアスだけど、考えすぎて固くなってるよなって。 自分的には、動きが硬くなってても楽しんでればいいじゃんって思ったんですよ。 なので、それを盛り込んだってこと。下手でもいいじゃん的な。結構僕自身が今まで生きてきて、「これ違くない?」って言われがちな人生だったので…。
…わたくしですね、いわゆる天然ってやつでして。結構ね、自分的にはこれが正しいと思ってても、普通から外れていることが多く。

F:誰しもあるけどな。

mu:結構多かったんですよ。担任に心配されるくらい多くて。この人はそれる人だから気を付けてみたいな。でも本人的にそれでよければ、周りに迷惑をかけてなければいいじゃんっていうわだかまりは持ってたので、下手でも、本人が楽しければいいじゃんって考えは共感してました。
あと、二つ目のメッセージで打算ばかり考えてて~の歌詞に関しては、この時、ラッパーとして売れたかったんですよね。もうソロでも頑張って、有名なアーティストにフックアップされないかなって思って、有名な人がいたら話しかけて、曲そんな聞いてもないのにファンですって言ってたりとかしてた時期なんですよ。まあ、そんなんしても意味はなくて、このMVの撮影時はめっちゃ病んでて、通院もしてましたね。

橋:すっごい目してたもんな。

mu:処方薬を飲んでたので(笑)

橋:MVは二日に分けて撮られてて、明日賀さんが写ってる神宮での撮影は二日目、ヴァースの部分は一日目なんだけど、mu knee man は一日目はわりとご機嫌なのに、二日目では入院してる人の目やもんな。

mu:当時2018年の1月から通院中で、リフレックスという薬を貰ってたんですけど、それが全然合わなくて…。めちゃくちゃ感情が出なくなったんですよ、ぐって抑えられる。だから全然笑ってないんですよ。この時期は病んでました。色々悩んでた時期ですよね。知能検査してもアスペルガーのグレーゾーンって言われたりとかしてて、そういう特性なのかって突きつけられて、でも、生きていかなきゃいけないみたいな感じシリアスな場面だったので、だからそういうことを、周りに合わせる必要ないって思ってたんですよね。
「笑われても、別に本人的に満足してるんだったらいいじゃん」てフェーズにいたんで。ラッパーとして売れたくて色々頑張ってたけど、結果に結び付かなかった。で、「打算ばかり考えてたやつは楽しめなくなってめんぶれい」っていうまあその二つが盛り込まれた曲ですよね。

今:全然、サンプリングじゃないね。この曲固有名詞は少ないよね。

mu:固有名詞は少ないから、画は浮かびづらいなと思います。それで、この曲を発表をした直後に、完全につぶれて、休職しまして…。本当にギリギリの時に作った曲、撮影した映像です。

 


 

次回お届けするのがインタビュー最終話です。

『世界はご冗談』の楽曲について、また、今までの楽曲がどうやって『南極』につながっていくのかが語られます。

公開は『南極』MVの方が先ですが、MVと併せて読んでもらえたらと思います!