Interview||Sho Imazu

ボウガイズ連続インタビューvol.3 〜bacter制作の新曲MV「南極」前史〜

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今まで2回に渡って連載してきたボウガイズのインタビューの最終回です。

取りあげる音楽は『世界はゴ冗談』、そして先日公開された『南極』について。

表現とユーモア、下請け業者mu knee man、mu knee manの鬱の克服法、『南極』には思想がない、などなど、『南極』の曲を作るに至った経緯、そして、『南極』に込められた思いが存分に語られたインタビューです。

こちらのインタビューを読んだうえで、『南極』を聞くとまた違った視点が得られるはずです!

 

まずは1曲目、『世界はゴ冗談』をご視聴ください。

『世界はゴ冗談』

 

■冗談みたいな世の中に笑いのメタファーで切り込む

 

今津(以下”今”):『世界はゴ冗談』という曲の中で、今までとは違うことが出来たんだよね?

FAT-LEE(以下”F”):東京五輪みたいに直接政治的主張を言うんじゃなくて、笑いのメタファーにかぶせながら、政治的なことであったりブラック企業のことなどを表せた、というところが今までとは違うところで、満足してるとこです。

サビの部分で言うと、「冗談と言ってくれ、さもなきゃ冗談に変えてくぜ」っていうのは、今の社会は、冗談言われてるみたいなおかしな世の中で、でも実際には冗談じゃないわけよ。だからそこは表現者が冗談として返していかないといけないと思って、書きました。例えば、アベノマスクのこととかね。ガチで批判しているのも大事だけど、そればっかりだと疲れてしまうから、「マスク…2枚!?(笑)」という笑いもかぶせていかないといけない。

それとサビの最後の「神や仏よりはるかに俺らは傲慢 笑い飛ばす世界はゴ冗」のところは、冗談のような、でも、冗談ではない狂ったことが起こっている世の中で、何が俺らの気持ちを救ってくれるのかっていうと、宗教とか高尚なものではないと思って。

今:「世界はご冗談」で歌われるようなユーモアによって、救われるということはありそうだね。正気を保てるというか。真面目になって受け止めれば受け止めるほど、よくわからなくなるけど、ユーモアかますと正気を保てるというか。

F:そうやな。やっぱり、笑いながら嫌な気持ちするって大事ちゃうんかな。

今:ブラックユーモアだよね。

F:深刻に考えていかないといけないことはあるけど、それだけではつらい。その気持ちをどう持続するかというと、やっぱりそれは表現でありユーモアで。表現やユーモアによって、世の中を見やすくするということが大事だと思う。

今:真剣に考えれば考えるほど、それは理性の側で考えるってことだと思うけど、それ続けてるとしんどくなるもんね。

F:ぐるぐるまわるし、ああいえばこういう言われるし、それに一発勝てるのは、感情に訴えることやけど、感情に訴えるのは何かって言うと、それが表現やん。それが美しいメロディーかもしれへんし、ラップで面白いこということかもしれへんし、映画として撮ることかもしれへんし、わからんけどな、いろいろあると思うけど。

橋本ハム太郎(以下”橋”):そういうのを、東京五輪音頭とかだったら、ストレートに言ってたけど、それをお笑い芸人の話とか、そういうメタファーを使ってリリックにすることで、より伝えたいことをユーモアを纏わせて表現できたってことやね。

F:大事なのは、これ再生数293やったから、そこをエレファントーンさんがなんとかしれくれるっていう、そこが大事なとこですね。

今:そうね。この記事でね(笑)

F:それと大事なのが、『パラサイト』も『世界はゴ冗談』の影響下にあるっていうことやな。

一同:(笑)

F:世界の格差問題を、大爆笑の渦に巻き込みながら伝えた、笑いながら嫌な思いをさせたっという意味で。これは、『パラサイト』は、『世界はゴ冗談』ひいては『ボウガイズ』の影響下にあるといっても、これは過言ではないのではないか…。

 

■引き続き、下請け業者mu knee man

 

橋:mu knee manのバースの一発目の「あのおっさん人生NO MONEYでFINISH」は痺れたで(笑)

mu knee man(以下”mu”):この時『マネーの虎』が流行ってたんですよね。

F:mu knee manの中でやろ(笑)

mu:YouTubeであがっていたのを俺とFAT-LEEさんで観て話してたんですよね。それが盛り込まれてたんだと思います。

橋:でも、「あのおっさん人生 NO MONEY で FINISH」の次が「カミさん大学生と不倫」って、こんな地獄あるっていう感じやんな(笑)。

mu:影響とかで言うと、おれは『ディス・イズ・アメリカ』ですよね。あれに影響受けた感じはあります。一応あれじゃないですか。世界はご冗談みたいな話じゃないですか。『ディス・イズ・アメリカ』も。それで、悲惨なこと書こうと思ったっていうのがひとつ当時マネーの虎が頭にあったので。それが入ってたってのがひとつ。

それと、そのころ使ってたマッチングアプリがひとつ。

その後に続くケビンスペイシーは、その時Me too問題が流行ってて、ケビンスペイシーが少年に性的暴行を加えたとかなんとかあったんで、特にケビンスペイシーには興味ないですけど、韻が踏みやすかったたので盛り込んだんですよね。

で、あとは、「ライツカメラアクション」とかは、スチャダラパーに「ライツカメラアクション」という曲があって、それがまあ学生の時聞いてて好きだったんでそれ入れて、あとは発注通り(笑)

F: RFP(提案依頼書)によって設計した。

mu:下請け業者なんで(笑)最初にFAT-LEEさんのバースが送られたんで、それに合わせただけですね、そん時頭の中にあったこと入れただけ。

 

■眉毛がなくなったmu knee man

 

mu:MVに関しては豊洲と上野で撮ったんですけど、めちゃくちゃ暑くて、ハム太郎さんが熱中症対策のたタブレットをくれたっていうのと、休職期間でほんとにやばかった時期なんで、ちょくちょく精神安定剤を飲みながら撮影したっていう思い出しかない(笑)

橋:眉毛もない時期やもんな。

mu:休職したんで、人と会わないから眉毛いらないんだって、眉毛剃りました。

今:もともと眉毛そりたかったん?

mu:眉毛はコンプレックスなんですよ。ゲジ眉でいじられたりしてて、眉毛なんてなければいいのにって思ってたけど、眉毛剃ったら剃ったらで遺恨が残るじゃないですか。だから剃れなかったんですけど、休職して人と会わないので、眉毛剃ってもいいという状況になったんで、人生では初めて眉毛全剃りというのをしたんです。

一同:へー。

mu:まあ、そういう経緯ですよね(笑)

 

■回復したmu knee man

 

F:でも、『ダンス&ダンス』の次が『世界はご冗談』で、『ダンス&ダンス』の時は沈んでたから、笑顔が一回もないって言ってたけど、『世界はご冗談』のMV撮影の時は、冒頭からにやけてたから、あんときよりもよくなったんかなっていうのは、今観てて思ったけどな。

mu:それはたぶん、薬が違ったからだと思いますね(笑)撮影当日に新しい薬のリフレックスを飲んで、めちゃくちゃくらってたんで、もうだめだってなって、そのあと医者に「この薬合いません」って言って、今まで飲んでたレファスのジェネリックのエチゾラムっていう薬があるんですけど、それに変えたんで笑顔があるのかなって感じですね。

F:それと『世界はご冗談』のMV今見ると、この頃からmu knee manとおれが仲良さそうにしてるなって思った。

橋:このタイミングからなん?(笑)

F:mu knee manと仲良くなって一発目のMVかもしれへんな。

mu:そんな仲悪かったんですか?(笑)

F:いや別に仲悪くはないけど。

今:『それ街』とか『ダンス&ダンス』の時よりは、仲良くなれた?

F:『ダンス&ダンス』の時も仲良かった気するけどな

mu:『ダンス&ダンス』の時は、おれが全然笑わないから、大丈夫?って心配してた記憶しかないですけど

橋:本当、『ダンス&ダンス』の明治神宮前での撮影の時、情緒がなかったからなー。

mu:その日が、新しい薬に変えた初日だったんですよ。

橋:(笑)まあ、そういうね、mu knee manのドキュメンタルでもあるよね。MVも。

今:名古屋に行ってどうなったんだろ。※mu knee manは『南極』の撮影後名古屋に転勤した。

mu:今はもう通院してないんですよ。薬も飲んでなくて。たまに珈琲飲んで、パニック発作的なものになることもあるんで、その時はエチゾラムっていうのを飲んでるんですけど、通院はしてないです。

効果あったのは、瞑想と…まあ僕瞑想してるんですけど(笑)、それと自炊。自炊で変なもん取り入れなくなって、今まではコンビニ弁当とか家系ラーメンとか食べてたんですけど、そうじゃなくて、栄養のあるもの摂るようになったっていうのと、あと、今は通ってないですけど、カウンセリング通って…色々カウンセリングでさらけ出してみたいな(笑)

一同:(笑)

橋:メンズエステ嬢にマッサージ受けながら、べらべら話すじゃあかんの?

mu:メンズエステ…でもメンズエステ嬢が、過去のドロドロした話を聞いてくれるかって話じゃないですか。でもカウンセラーは、過去のドロドロした話を聞きますよ、それでお金をもらいますよっていうスタンスでいてくれるので、何話してもいいわけですよ。なんでも話せるので。なんでも話しましたね。それでちょっと、完全回復とはいかないけど、ある程度回復には向かいました。

今:病院とカウンセリングは並行した方がいいの?

mu:病院は、薬もらいにいくだけですよ。病院は、話を聞く気がなかった。ほんとに、採算上げることしか頭になかったんで、話を聞くことはなく。話したければカウンセリングに行ってくださいというスタンスだったので。

橋:まあ、そういうわけで、この回はこの辺で。どんな話で終わんねんっていう(笑)

今:じゃあ、次は南極の話で…。

橋:まあ、mu knee manのカウンセリングの話でいきなり終わるのもかっこいいけどな(笑)

今:それもありだけどね(笑)

橋:なんてやつらやっていう(笑)すごい面白いやつらやなってなるけどな。

F:次は、万を持して『南極』やけど、ほんまおれらの中で無内容の曲やで。

mu:はじめて、FAT-LEEさんが下請け側に回った曲ですよね。

 

■「フットボール後藤的にいうと思想が濃かった」

 

今:南極は今までと違う作り方をしたんだよね?

F:正直言って、これまでの熱量では語れないから、黙ると思うで。

mu:今までは曲作りがFAT-LEEさん先行だったんですよ。FAT-LEEさんがテーマを決めてバースを書いて送ってきて、下請け企業であるわたくしがそれに合わせてリリックを書くっていうやり方だったんですけど、南極に関しては、テーマを決めて、そこから二人が各々書くという手順だったんですよね。

橋:テーマはmu knee manが決めたテーマで。

F:ていうか、mu knee manがトラック送ってくるとき、いつも変なタイトルがついててん。「週刊誌」とか(笑)聞いたらラップとかも入ってないのに、いつも変なタイトルがついてて、そんなかに南極があってん。ゲラゲラ話ながら南極でいったらええんちゃうんってなって、実際に曲のテーマになったっていう初めての曲。だから最初の方はネガティブな反応してて、だって南極で作るって無理やから(笑)

mu:おれが南極でいいんじゃないんですかって話をしたんですよたしか。で、なんでそう言ったかって言うと、今まで思想が濃かったからです。フットボール後藤的にいうと思想が濃かった(笑)。だから、思想がないものを作りたかった。だから、南極とかいいんじゃないんですかって言ったんですよ。南極なんて思想ないじゃないですか。政府がないんだから。

一同:(笑)

今:誰の土地でもないからね。

F:それちょっと厳しいなーって言ってたら、mu knee manが、「南極ってドンキとかもないですよ」とか言ったりとか、俺のリリックに反映してるやつを提案してきて、じゃあなんかいけるかなっていう感じで(笑)

mu:頑張って説得したんですよね。ポリティカルじゃないものを作りたかったんですよ。その時は。

橋:ヒップホップには土地を舞台にする曲は多くて、ひとつ のジャンルになってるけど、だいたい自分の地元について語る んだけど、そのパロディーで誰の地元でもない南極で曲を作る。という風におれは受け止 めたから、それやったらボウガイズとしてやっても面白いかなと。

mu:そう。それでハム太郎さんが加勢してくれたから、味しめたと思って(笑)

F:味占めんなお前(笑)

mu:僕的には単純に思想がないものを作りたかった。で、FAT-LEEさんを説得したかった、そこにハム太郎さんが加勢してくれて、やったと思って。そういう感じなんで。

F:それやったら、まあ、一個ギャグとしてイケルかなと思って、やってみたっていう感じやな。

 

橋:ほんで、いざ蓋を開けたらさ、mu knee manがわりとメッセージ的なこと最後ぶち込んでて。結局書くことなくて日頃の鬱憤とかぶちまけてるよな。

mu:思想がないもの作りたいとか言っときながら、書くことなくて。リリックを書いた当時、病んでたっていうのもあって、変な教訓めいたこと言おうとしてたんですね。それが最後に滲みでてしまったっていう曲ですね。

橋:「お前らはなんも知らぬまま 稼いでる円やユーロダラー」のくだりな。

mu:ルサンチマンみたいなしょうもない考えが入っちゃったみたいな(笑)

橋:なんで南極というテーマで、南極について歌ってんのに、最後「円やユーロやダラー」で終わんねん(笑)

mu:ちょっと…ちびっちゃってましたよね。そもそもなんで思想がないものを作りたかったかっていうと、タモリが「思想がない曲がいい」って言ってたんで、そに感化されてたんですよね。井上陽水もそれに感化されて、「思想がない曲がいい」って言ってたのが、ひとつあったのと。K DUB SHINEが作ってた曲がトラック的に怖くて、怖いなーと思って、こういうのじゃない曲作りたいなーというのがひとつ。

F:K DUB SHINEの曲って怖いよな。

mu:そう。怖いんですよね。K DUB SHINEさんがロウハイなトラックでラップしたら最高だなと思うんですけど、それはないんだろうなー。だから、タモリとK DUB SHINEの影響で出来た曲ですね。

F:それK DUB SHINEの影響っていうんかな。でも、井上陽水ってさっきいったけど、『少年時代』の「夏が過ぎ風あざみ」という歌詞、「風あざみ」っていう言葉無いらしいうやんな。自分で作ったらしい。いい感じで(笑)。無茶苦茶mu knee manの世界観やんな。

mu:だから意味のない曲を作りたいんですよね。でもなかなかむずかしい。自分も結局書くことなくて、教訓めいたこと書いちゃったんで。失敗作です、南極は。

F:俺としてはわりと無内容でいけたからな。

今:確かにFAT-LEEのリリックは無内容だったね。

橋:だから、FAT-LEEの方が今回は職人やな。

F:そうやねん。今回は俺が下請け企業、mu knee manが発注側にやったな。

橋:これはもしかしたら、下請け企業の方が曲の本質を突きやすいっていうのはあるんかもしれへんな。

 

■思想がない音楽

今:でも思想がない曲がいいっていうのは、どういうことなん?

mu:タモリが、オールナイトニッポンで「思想がない歌」っていうコーナーを持ってたんですよ。思想がない歌を紹介していくコーナーだったんですけど。それに、井上陽水が感化されて。その時、井上陽水はメッセージ性が強い曲を作ってたんですけど、これじゃだめだと思って、意味のない曲を作らないといけないと思って、方針を転換したっていうのを、「てれびのスキマ」っていうライターかなんかいるんですけど、その人が書いてるネット記事で読んだんですよ。俺のインプット情報だいたいネット記事なんですけど(笑)。「てれびのスキマ」のネット記事に感化されて、南極を作った。

F:感化されたやつに感化されたんやな。

mu:だから、孫請けですよ(笑)

今:mu knee manはこれから思想がない音楽を作りたいんだ。

mu:それも…わかんなんいですね。そん時はそう思っただけで。基本的に、韻を踏んで遊びたいっていうのがあるので。韻をふんで遊びたいけど、テーマで意味あるものを作るか作らないかはその時の気分です。基本的に、韻を踏みたいので。

橋:でも、無内容、無思想の曲は意外と作ろうと思ったら難しくて、実際、その辺りのクラブいって無名・有名問わずラッパーのlive聞いたらさ、99%何かしらのメッセージがある歌ばっかりでさ。完全になんにも言ってない歌の方が、意外とない。

F:だからそれが、2000年代初頭に出た、ニトロマイクロフォンアンダーグラウンドやったりすんねん。

mu:意味があるかないかも聞く人が決めることなので。ニトロも意味ないとはいえ、聞く人によって意味があったりするじゃないですか。

F:いや、ニトロの解釈はないで。

mu:いや、でも、人によったらあったりするかもしれないですよ。ブッタブランド人間発電所だって、「切り裂き魔。霧吹き魔」が、聞く人によっては意味がある可能性もあるわけですよ。だから、意味があるないは、作る人の自己満足でしかない。自己満足でもいいから、意味がないような曲を作ったのが南極。意味あるないは、聞く人の状況とかによるんで。

F:や、それはそうやけど、自己満足でしかないとは思わへんけどな。意味のある曲は、その意味をどう伝えるかまで考えて作るべきやと思ってるから。

mu:まあ、そうですけど、聞く人は作った人がどう考えたとか気にしてない場合もあるから。

F:そやで。だから、出来るだけ伝わりやすく。100%みんなに伝わるとは思わんけど、それを目標にやらないといけないという態度の曲もあると俺は思う。

mu:そういう曲はあるんですけど、結局聞く人は赤ちゃんかもしれないし、

F:まあね。誰が聞いてるかわからんっていうのはその通りやな。

mu:全然日本語わかんない人かもしれないじゃないですか。

橋:まあでも、ナンセンスっていうのは難しいよ。

mu:意味があるかないかは、作った本人がそう思うかどうかじゃないかなと思うんですよ。意味なんて見つけようと思えば見つけられちゃうんだから。

橋:だから、意味を見つけにくくするのは大変なんだよ。

F:いきなり井筒みたいな話し方になったけど(笑)

橋:だってナンセンスなことって頭よくないとできへんやん。頭悪いやつほどメッセージ込めるやん、だいたい。「頑張って生きていこう」みたいなさ。

F:でも、そういうメッセージこそ表現をするきっかけでもあるしな。

橋:たしかに、ナンセンスを作ろうっていう時点で、表現のための表現になってて、その時点で頭でっかちになってるよね。なんも考えてないやつがなんも考えないまま作ったら、メッセージソングの方が作りやすいはずやと思う。

F:作りやすい…とはいえ、それがどのくらいのメッセージソングかっていうのは、俺は気にしてるとこやけどな。

橋:それはなあ、 GReeeeNみたいなメッセージやろ。

F:でも、98%くらいはメッセージソングじゃないかなと思う。それはやっぱり表現をしようとして、歌詞を書くわけやろ。歌詞ってやっぱり言葉やから、言葉自体がメッセージやん。何かを伝えるための手段やねんから。だから、意識しないと「無メッセージソング」は作れない。

mu:いやでも、メッセージソングかどうかは聞く人によるんで。意識しようがしまいが。作った本人がどう思うかっていうのと、聞いた人がどう思うかは別だと思う。

F:それはそうやけど、だからこそ、ほとんどの曲は何かしらを思ったからこういう表現になった、それは意識が高くても無意識でも。そういう場合、この曲でこうしようと思ったことはとことんまで伝わりやすくやったりとか、面白いように思われるようにやったりとかした方がいいとおれは思ってるから。だから、受け手にとってメッセージソングたりうるようにせなあかんと俺は思ってんねん。

 

今:でも思想のなさ自体がメッセージになっているっていうこともあるんじゃない?

F:でもそういうこと言いだすとな、3.11の時に無思想な曲を作ったら、むしろこの緊迫した状態の中ではメッセージだって世間が批判しだしてん。あと、斉藤和義が自身のヒットソングを替え歌にして原発批判をした時に、それを寒いと批判する意見があり、それが嫌やった。

「受け手にとってメッセージであれば、メッセージソング」というのは結果論としてはそうやけど、でも、音楽の一番端っこにいるとしても、われわれ音楽作ってるんで、作り側としては、最大限頑張らなあかんやん。聞く人それぞれやからっていったら、それはそうやけど、それであきらめてはいけないと俺は思う。

橋:まあ、でも世間の批判もわかるけどな。菊池成孔も言ってたけど、あそこで替え歌じゃなくて、「歩いて帰ろう」をそのまま今の状況で歌う方が、メッセージとし て強烈になったはずで。

F:でも、そこは出し方の仕方の是非やろ。

橋:だから、単純にメッセージを相手にわかりやすく伝えるっていうのが、決してメッセージを伝える上で一番いい効果っていうとそうではないっていう話よ。

F:でもおれは、その斉藤和義がその曲で伝えようとした努力は評価したかった。結果として、その方が効果的だったという批判はあるにしても。それでやろうとしたことを寒いとは俺は言いたくなかったっていう感じやな。

橋:それはわかるな。方法論としては安易やなと思ったけど、寒いとかそういう批判をするやつはあんまり好きじゃないかな。

 

■韻を踏むのが気持ちいい

F:で、南極はどうやってことやんな(笑)あえてさっきの話と繋げると、メッセージがない無内容な曲を出すことになんの意味はあるんだって話になるよな。

mu:すごいうるさいと思っちゃったんですよ。主張のあるものが。うるさいじゃないですか、こうすべきとか、別にそういう曲じゃない曲も作りたいなと思ったので、作ったんですよ。「こうすべきだ!」「世の中は…ああ…ここはだめだ…ここはよくない…!」とかうるさいじゃないですか。そういうのがない曲が作りたかった。

F:そうだとして、うるさくない曲を作ったとして受け手にはどう思ってほしかったん?

mu:受け手はまあ、ライムが気持ちいいなとか、トラックが気持ちいと思ってくれたらいいなと思いました。作る側だって、主張なくても…僕とかは韻踏んでる文章声に出すのが好きでラップやってるんで。

F:身も蓋もないこというなお前(笑)

mu:韻を踏んでる文章声に出すの気持ちいいからやってるだけなんで(笑)

F:韻を踏むの気持ちいってやばいな(笑)

mu:だってそうでしょ。FAT-LEEさんだってそうでしょ。

F:まあ、それは、あるある。

mu:それをやってるだけなんで。

F:そっちの方に重点を置いてる曲があってもいいってことね。

 


 

その後も、議論好きなボウガイズ、音楽論議は延々と続きます 。が、紙面上きりがないので、インタビューはこれでおしまいとします…。
このインタビューでは、ボウガイズのキャラクターができるだけ伝わるように、インタビュー(というか放談)をできるだけ忠実に文字に起こしました。

新曲『南極』のMVをご覧になる方は、このインタビューの中で浮かぶ上がるボウガイズのキャラクターを頭の片隅に置いていただくと、より面白くMVを観れるのではと期待しています。
ぜひ『南極』MVも併せてご覧ください。